■■■三空日記3



不思議そうな瞳で自分を見上げる悟空に、はっと我に返る。
衝動に任せて悟空の両手首をシーツに縫い付けて、自分の下に押さえ込んだけれども。
俺のこの行為の意味を知らない悟空の、無垢な瞳が俺を見上げていた。
汚れない、金色の、大きな瞳。
それに写る自分。

「さん…ぞ?」

きょとんっと大きな瞳を瞬かせて、悟空が俺の名前を呼ぶ。

「………チッ。」

とまらない。
そんなのとっくにわかってた。
いつまでたっても俺に抱きついてきて、好きだ好きだと言う悟空。
それは飾らない悟空の、真っ直ぐな言葉。
毎日真っ直ぐに向けられる、真剣な瞳。
そろそろ限界を感じていたのも確かだ。

あいつの出現が、俺の心を揺さぶる。

そしてあいつの出現は、このきっかけをあたえるには十分で。
抑えていた衝動の壁を突き破るには十分で。

「あいつはどこに触れた?」
「あいつ?」
「焔だ。」

数日前、悟空は焔の元へとさらわれた。
さらわれたのか、自分からついていったのかはわからないけれども。
その時の焔の言葉から、焔が悟空に何かをしたのはわかっていた。
聞くつもりはなかったけれど、首筋に残る紅いアトが悟空の襟元から見えた瞬間、悟空の身体を押し倒していたのだ。

不思議そうに首をかしげた悟空が、ああ。と小さく呟いて。
少し考えた後、曖昧に笑った。
その笑顔に、眉間に皺が寄る。

「えっと…手首と、首と…頬…かなぁ…?」
「ここか?」

手首を掴んでいた手を上げて、悟空の手首に口付ける。

「えっ…!?さ、三蔵っ!?」

驚いたように手を引こうとする悟空のそれを掴む手に力をこめて。
一瞬で真っ赤になった悟空の頬にも唇を寄せた。
そして首筋に顔をうずめると、悟空の肩が小さく跳ねる。

「ひゃっ…擽ったいってば!」
「他には?」
「他には―――って…そんな、三蔵?どうしたんだよ。」
「煩い。」

お前は俺の物だ。
そうだろう?他の誰かに、たやすく触らせてんじゃねェよ。

思っても口にはしないけれど。

そしてふっと気がつく。
悟空の首吸いに残る、紅いアト。

「悟空…お前、焔に――――。」
「え?何?」
「ココ、触れられたのか?」

とんっと指先でつつくと、悟空はまた少しだけ考えて。
そして思い出したようにああと口を開いた。

「噛まれた。すっげェ痛かったー!くっそー。倍にして返してやる!」
「するな。」

紅い紅い、紅いアト。

悟空の細い首筋に残る、所有印。

勝手に人のモンに手ェだしてんじゃねェよ。

そのアトに唇を寄せて。
歯を立てると、悟空の身体が再び小さく跳ねた。

「っつ…!!何?三蔵、噛んだ?」
「こんなアト、消してやるよ。」
「アト?アトなんてついてた?」
「………痛いか?」
「………イタイ…けど、それ以上に熱い。」
「………。」
「焔ン時は、熱く…なかったのに…。」

少し荒い呼吸をする悟空の顔を覗き込む。
そしてその悟空の顔を見た瞬間、息を呑んだ。
頬を紅く染めて、瞳を潤ませて。
少しだけ息を乱して。

「あつ…い。さんぞう…。」

「………悟空………。」

震える手を伸ばす悟空の、その指先に自分の指を絡めて。
呂律の回らない悟空の舌を、自分のソレで絡めとった。



2004/11/13
まこりん





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