■■■三空日記7



窓から差し込む、眩しい光。
冬の太陽は、目が眩むほどに眩しい。
一面真っ白になるくらい、キラキラ、キラキラ。
換気するために少しだけ開いていた窓から、冷たい北風が入り込んできて。

悟空はそっとその窓に近寄った。

ぎしりと僅かに床が軋んで、しまったと唇を噛んで。
そろりと振り返ると、いつもの机に突っ伏している青年を見た。
見て―――ほっと胸を撫で下ろす。

耳を澄ませば真っ白い部屋に微かに響く、心地よい寝息。
すーすーと静かなソレは、彼が今だ眠りの世界にいることを示していた。

ぱたんと。できるだけ小さな音を立てて、窓を閉める。
入り込んできていた冷たい北風に、彼が肩を震わせると、悟空は少し困ったように辺りを見回した。
このままでは風邪を引いてしまうかもしれない。
かといって彼を起こす気にはならなかった。

いつも自分よりも早く起きて、遅く寝る彼の。
睡眠時間が少ないことはわかってる。
そんな彼が仕事の合間にしてしまっている、ほんの些細な居眠りだ。
あまり起こしたくはない。
どうせ起きたら、また眉間に皺を寄せて両端にある書類に目を通すのだから。
今くらい寝かせてあげたかった。

とにかく自分と三蔵の寝室から、少し薄いケットをとってきた。
あまり重たい物だと、その重みで起きてしまうかもしれないと思ったからだ。
そしてそれを広げると、再びそろりと彼の近くに寄った。

すーすーと、規則正しい寝息。
伏せられた長いまつげ。
整った鼻筋と頬のライン。

ため息が出た。

綺麗な顔。

そう本人に言ったら思い切り嫌な顔をされてハリセンで叩かれるのは目に見えているが、本当に心から思うのだ。綺麗だと。
白い頬にかかる金糸が、冬の眩しい陽の光に照らされて、きらきらと輝いて。
冬のしんっとした静かな白い空間で、彼はその輝きを増していた。

「さんぞ。」

小さく彼の名前を呟く。
息を止めるとそっとケットを肩にかけて、静かに静かに、息を吐いた。
三蔵を見ていると、胸がドキドキする。
こんな風にまじまじとなんて、普段は見ていられないから。
益々心拍数は上昇して。
その音で三蔵が目を覚ましてしまうんではないかと思った。
だから一歩、離れようとして―――それでも瞳は彼に奪われたままで。

ふっと、その頬に。触れたくなった。

白く整った、その頬に。
整った彼の穏やかな寝顔。

「今は―――ゆっくりと。」

寝てろよな。

そう胸で呟いて。

そっと三蔵の頬に唇を寄せた――――――。









ぱたん。

扉のしまる音がして、彼は瞳を開けた。
ゆったりと。ゆっくりと。
そして軽くしたうちを一つ。

「オチオチ居眠りもしてらんねェな…。」

くしゃっと前髪を掴むと、机の端にあるタバコの箱に手を伸ばした。
頬にはほんのり、暖かなぬくもりと。
肩にかかったケットに移った悟空の香りに包まれて。

「ばか猿。」

軽く舌打ちして、ふっと唇の端を持ち上げた。







2004/12/06
まこりん



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