■■■三空日記8 「お前さぁ…三蔵のどこが好きなワケ?」 北風が吹く寒い、寒い宿へ向かう道すがら。 突然悟浄に聞かれて、頬張ろうとした肉まんを思わず口から出してしまった。 三蔵がいたらきっと、汚ねェって、ハリセンが飛んできたと思う。 「何?突然。」 「いや、なんとなく聞きたくなってみただけなンだけどよ。」 「う〜〜ん……?」 「坊主のクセにタバコは吸うわ、酒は飲むわ。オマケに博打はするわだしよ。口は悪いし、すぐに死ねだの消えろだの。銃だって平気で向けてきてぶっ放すし。で、どこが?って思ったワケ。」 肉まんを口から遠ざけて、首をかしげる。 どこが。と聞かれても、正直わからない。 好きなものは好きなのだから。 それどころかもっとわからないのは――――。 「悟浄は三蔵が嫌いなのか?」 「は?あー………すーぐ銃ぶっぱなすからなぁ。嫌いじゃねェけど、好きか?といわれるとまたなんだか好きとは言いたくねェな…。」 少し照れくさそうに悟浄がふいっと視線をそらす。 悟空は持ってた肉まんを頬張ると、一気にもぐもぐと噛んで飲み込んだ。 そして肉まんのはいってた袋をくしゃりと握りつぶすと、再び首をかしげる。 「俺、悟浄がどうしてそんなこと聞くのかわかんねェよ。」 「………。」 「だって、三蔵みたいなヤツ、好きにならないわけねェのに。」 本気でわからないといったような顔で、悟空は悟浄を見上げる。 それに呆気にとられたのはもちろん悟浄で。 「三蔵を好きにならないヤツになんで?って聞きたい。」 大きな黄金色の瞳が、くるりと動く。 とりあえず悟浄は大きくため息をついて――――大人しく両手を上げた。 「あ〜〜〜〜………俺が悪かった。ゴメンナサイ。」 「って、何で急に謝ンだよ!?わけわっかんねぇな〜!」 本気でわけがわからなそうに怒り出す悟空の頭に、上げていた手をぽんっと置いて。 子ども扱いするなと怒る悟空の頭をわしゃわしゃと掻き混ぜる。 「やっぱ、お前サイコー。」 「はぁっ!?」 見えてきた宿の窓から、見慣れた紫煙が流れていた。 そして見慣れた人物の影。 「あ、さんぞー。」 「お?ほんとだ。」 「さんぞー!」 両手を大きく振りながら駆け出した悟空に、悟浄は唇の端を持ち上げた。 2004/12/07 まこりん |