■■■視線の先



「大体アイツの視線の先にはいっつも三蔵じゃん?」
「まぁ…それは…最初からわかっていたことですよね。」
「なんかサ、犬みたいだと思わねェ?」
「三蔵さんのいくところ、どこでもついていってますからねェ…。」
「この前なんて朝起きてきたらさ、『おはよう』とかいいながらまず周りを見渡して『三蔵は?』だぜ?とにかく寝ても覚めても三蔵三蔵って…。」
「ああ…三蔵さんが席をはずしていたときですね?」
「どうしたらあんな風に真っ直ぐに――――。」
「悟空の三蔵さんに対するモノは、絶対的なものですからね。」
「なんて言うか、俺的にはそーゆーの、わっかんねェ。」
「羨ましいんですか?」
「………。」
「たった一人を真っ直ぐに思って信じられる悟空が?それとも―――。」
「………。」
「自分をあんな風に信じて、慕ってくれる悟空がいる三蔵さんがですか?」
「八戒。」
「悟浄気がついていますか?あなた…二人と会ってから………いえ、悟空とあってから。悟空の話ばかりですよ。」
「冗談。」
「口を開けば悟空と三蔵さんのことばかり。気がついていないんですか?」
「………。」
「でも正直、悟浄の気持ちはわかります。誰だってあんな風に誰かに愛されたいと思うでしょう。」
「それじゃあんな風に愛してくれるなら誰でもイイみたいじゃねェか。」
「じゃあ、悟空に愛されたいですか?」
「……そーゆーワケじゃ…ねェと思うけど。」
「まぁ…、あ。お湯が沸いたみたいです。コーヒーでいいですか?」
「お?あ、ああ…。」
「ちょっと待っててくださいね。」


ぱたぱたぱた。


「ただ、あの視線の先にいるのが――――――。」


言いかけて、飲み込む。
一瞬何を言いかけた?
口元を手で押さえて唾を飲み込む。


俺だったら。と。


一瞬でも思ったその答えは―――――。







>>>あとがき

三空日記で書いたものです。
きっと悟浄的には三蔵と悟空がすっごく羨ましいと思います。
幼少時代のことを考えても、こう自分を愛してくれる人がいるってこと。
愛する人がいるってこと。そういうのが凄く羨ましいんじゃないかなって。

2005/05/14 まこりん





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