■■■ついてこい


「俺は一度もついてこいなんて言った覚えはねぇよ。」

不機嫌そのもの。
な、顔で三蔵が言うのを、らしいな。とか思いつつタバコを咥えながら聞いていた。
三蔵がそんなことを言うのは、想像もできない。
それにどちらかといえば、三蔵についてこいと言われたから、悟空がついていってるというよりも、悟空は悟空の意思で。三蔵についていっている気がする。たとえ来るなといわれても、悟空は三蔵についていくのだろう。ついていきたいから。

なんとも羨ましい限りで。とは口にしないが、最近知り合ったこの二人の関係は、まだ知り合って間もないが段々とわかってきていた。
それほど、わかりやすいのだ。
ある意味二人とも素直といえば素直だ。
隠そうということはしないし、思ってもいない。
お互い思うままに振舞っているからこそ、わかりやすかったりもする。
もっとも個人個人においてはわかりにくいことこの上ないが。
二人セットならある意味かなりわかりやすい。

「だろうな。」

ぷはーと口から出した煙でわっかを作って、ソレをボーっと眺めて。
チラリと視線を動かせば、相変わらず目の前で嬉しそうに肉まんを頬張っている悟空と、それをただじっと…何も言わず、表情も変えずに見ている三蔵。
ふっと…苦笑した。

ほんとに、ある意味一番わかりやすい。

「あーうまかった。」

食べ終わって満足そうにおなかを叩く悟空が笑うと、三蔵は口に咥えていたタバコを灰皿に押し付けて立ち上がった。

「行くぞ。」
「え?もー帰んの?」
「いたければずっとここにいろ。」

慌てて立ち上がる悟空をちらりと見て、三蔵は悟空に背を向ける。
悟浄は小さくため息をついた。
案の定、悟空は慌ててごちそうさまと悟浄と八戒に言って、さっさと背中を向けて出て行ってしまった三蔵を追いかける。

「じゃあまたな!悟浄!八戒!」
「おう。」
「またきてくださいね。」

悟浄は満面の笑みで手を振る悟空をぼけっと見ながら、すっかり短くなったタバコを灰皿に押し付けて。
きっと今同じことを思っているであろうとなりの八戒に、このやりどころのないモヤモヤを押し付けてみたりする。

「つっこみどころが多すぎなんですけど?」

八戒が小さく笑うのが気配でわかった。
きっと苦笑してる。

「ですねぇ。」

ずずっと隣で八戒がコーヒーを啜るので、俺の分もと小さく言って。
もう一度タバコを口に咥えた。

「ノロケか?」
「ですねぇ…。」

呆れる悟浄に、八戒はコーヒーのはいったコップを差し出した。





>>>あとがき

本当に突っ込みどころの多い小説です。
ありすぎて新年早々、私の頭の方こそヤバイな。と思いました(笑)

三蔵は悟空についてこいといったことがなくても
『行くぞ』と声をかけるので、それはつまり同じなのではないか。
と常々思っておりましてコレができました(笑)

2005/01/15 まこりん



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