■■■ だって好きだから


「最近あなたってばかわったわよね。」
「突然何言い出すんだい?クレアは…。」

ネルの言葉に、クレアはふふっと笑う。
楽しそうに、嬉しそうに笑って、そんなクレアにネルは不機嫌そうな顔つきにかわった。
自分が笑われているのが気にいらないからだった。

「フェイトさん達がきてから変わったわ。」
「………どういう意味だい?」

あから様にネルの声が変わる。
トーンが落ちて、低い、機嫌の悪そうな声。
ネルはこういった会話が嫌いだった。
自分で遊ばれているような会話。
クレアの場合はタチが悪いからだ。
そういえばロザリアも噂があるって言っていた事を思い出して、ネルは噂の発端はクレアなのだと気がついた。

「だって前までは、可愛い一面は私の前でしかみせてくれなかったじゃない?」
「クレア。」

低い声で睨みつけても、クレアはひるまない。
全然かわらない態度で、ふふっと笑うのだ。
昔からそう。クレアに自分の睨みはきかない。
そんなところはフェイトとそっくりで、どうにもならない相手だった。
かといってこのままそんな話に付き合うのは嫌だった。
それは長年クレアと一緒にいたからわかっていた。
だからはやくココから去るのが得策だとわかっていて。

「そうやって怒るのは相変わらずだけどね。」
「そういう話ならもういくよ。」
「だってこの間みちゃったのよ。」

クレアの前から去ろうと、クレアに背を向けようとしたネルの動きが固まる。
そのネルに、クレアはまったく変わらぬ笑顔で話続けた。

「あなたってば、フェイトさんに『可愛い』って言われて、真っ赤になってたじゃない?あんな表情は、私の前でしかみせないものだと思っていたから…なんだか悔しかったわ。」
「クレア!」

ばっと手の甲でネルが口許を隠す。
耳まで真っ赤になったネルが、クレアを睨みつけるが…真っ赤になったネルの顔では益々迫力がない。

「ふふふ。ホラ、そんな顔。久しぶり。」
「クレア!いい加減にしなよ!もういくからね!」

ばっと。
ネルのマフラーが翻る。
紅い髪が風に靡いて、マフラーも同じように靡いて。
クレアは瞳を細めると、ふふふっと笑った。

最近のネルは人前では感情を殺すところがあったから。
それは隠密としてはいいことだけど…彼女自身としては可哀相で。
どうしたもんかと思っていたからクレアは少しだけど頭を痛めていたのだ。

「あはは。お前さんもネルが好きだな。」
「あら。あなたは…そんなところにいたの?」
「気づいていたくせに良く言うぜ。」

突然後ろから声がして、クレアは振りかえった。
そこにはクレアよりも一回りも二回りも身体の大きなクラウストロ人の青年がいた。
ぱしっと手を叩いて、金髪の青年がクレアの近くのテーブルに腰掛ける。
背が高いから、どうしてもイスよりもテーブルの方が彼には丁度いいらしい。
彼に良く似合う黒のスーツが、ゆらりと揺れて。

「『可愛い』なんて言葉で照れるような女じゃなかったんだけどな。初めてあった時、俺が『美人』って言ったらあいつなんて言ったと思う?」
「少しだけ笑って『それは素直に感謝するよ。』とかかしら?」
「そのとおり。」

がははっとクリフが笑う。
それにクレアもふふっと笑った。

「だって仕方ないじゃない。フェイトさんに言われるのと、他の人に言われるんじゃ違うんだから。あの子にとってはね。」
「確かにな。ま、あいつもネルに言われるのと、俺らに言われるのじゃ違うみたいだしな。」
「仕方無いわね。恋愛に不器用なネルと、器用なフェイトさんじゃ…ネルはいつもふりまわされてばかりね。」
「それがそうでもないんだがな。あいつもネルの前じゃ割りと不器用なんだぜ?」
「あら。」

ふふっとクレアが笑う。
クリフも笑って。

ネルの出ていった扉の向こうを見詰める。
見ていて面白い二人の未来に幸多きことを願って。

クレアとクリフは二人の会話で盛り上がった。
















「ねぇ…フェイト?」
「なんだよ。」

幼馴染の少女の声かけに、少し不機嫌総にフェイトが顔を上げる。
クリエイト案を練っては削除して…を繰り返して、まっしろなスケッチブックが黒くぐしゃぐしゃに塗られていた。
そのフェイトの手元に、ソフィアは一瞬声をかける時を間違えたかと思ったが…はやく用件を言えとばかりに見てくるフェイトに、仕方なく口を開いた。

「私、ネルさんって美人だと思うんだけど。」
「美人だよ。」

さらりとフェイトが言う。
ソフィアは一瞬喉に何かをつまらせたような表情をして…再び口を開いた。
くいくいっとフェイトの服を引っ張る。

「そんなネルさんに、よくフェイトってば『可愛い』って言うじゃない?アレ、なんか違うかな…って思うんだけど。」
「………。」
「フェイト?」
「だって仕方ないじゃないか。可愛くって仕方ないんだから。僕には可愛く見えて仕方ないんだよ。もちろん美人だとも思うけどね。」

フェイトの言葉に、ソフィアが複雑そうな顔をする。

「用事ってそれだけかよ?今忙しいんだから、あっちいってろって。」
「フェイト〜!!」

ばしんっとフェイトの肩を叩くと、ソフィアはモヤモヤした気持ちのまま廊下にでた。
部屋の扉をあけて廊下に出た瞬間、ばちりっと…たまたま目の前にいた女性と目が合う。
フェイトと同じ瞳と髪の色をしたマリアだった。

「あ、マリアさん。」
「あなたもばかね。」
「え?」

いつものように変わらぬ表情で、マリアが言う。
そのあまりにもな言葉に、ソフィアは言葉を失った。

「好きだから、『可愛い』って思うんじゃない。それが『愛しい』ってことなんだから。」
「あ。」

マリアに言われて胸のモヤモヤがはれる。

ああ。だからフェイトはネルに『可愛い』という感情を抱くのだ。
そしてネルはそれが嬉しくて恥ずかしいから『照れる』のだ。

それがわかったら、ただのばかっぷるなんじゃないの!と。
ムショウに怒りが込み上げてくる。

ばかばかしくて仕方ナイ。

「なんだか…やってられませんね…。」
「あの二人になんてかまってると疲れるわよ。適当にからかうのが1番。」
「からかうって…。」

ソフィアの言葉に、マリアの表情がほんの少しだけ和らぐ。
口許だけで笑みを作って、マリアはさっさと歩いていってしまった。
そんなマリアの後ろ姿を見ながら、ソフィアは溜息をつく。

ばかばかしくってやってられない。

心配して声かけてみれば冷たい返事が返ってきて、そして『あっちいってろ』とか言われちゃって。
フェイトのばかー!
と心の中で舌を出して、ソフィアは廊下を歩き出した。

なんだかばかばかしくてやってらんないけど。

「取り合えずこのまま二人が幸せならいいんじゃない?」

幼馴染として心から祝福してあげるわ。と笑った。





あとがき

え〜と…どうしましょうかね
コレまた微妙なものを書きました。
別にソフィアが嫌いだからこういう扱いって訳ではなくて
普通に。フェイトがああいう態度をとれるのは
クリフ相手かソフィア相手かなって思いまして。
でああいう助言をしようとするのも
ソフィアかなって思ったら
可哀相な役周りに…ソフィアごめんね…

SO3に票を入れて下さる方が
意外と多くて驚きました!
アンケートにお答えくださってありがとうございましたv
この作品をアンケート回答者様に捧げます。

2003/08 まこりん

この小説を1周年記念アンケートに
お答えくださった方々におくっていました。
1ヶ月たちましたのでサイトの方にアップします。

アンケートにお答えくださった方、本当にありがとうございました。
感想や希望するシチュなど、本当に嬉しくて楽しかったです。
参考にさせていただきますね。



>>>戻る