| ■■■ 唇 痺れるような…甘い刺激。 疼く身体の熱に、敏感な身体。 自分の身体が、こんな風に熱を帯びるなんて思っていなかった。 「ネルさん、そこに座ってください。」 「ここに?」 フェイトが示した場所は部屋の真中にあるテーブルだった。 だから…そんな食事をする場所に座っては行儀が悪いだろう。ネルは戸惑って、手をついて寄り掛かるだけにした。 ごそごそと道具袋を漁ってネルに背を向けていたフェイトが、くるりとネルの方に振り返る。 テーブルに寄り掛かっただけのネルに軽く溜息をついて、フェイトは手にしたコビンをふるふると振った。 「座ってください。って…僕は言ったはずですけど?」 「でも…。」 「治療がしにくいでしょう?」 「ぅわっ……!!」 ひょいっと、軽々しくフェイトがネルの腰を持ち上げる。 突然足が床から離れて、ネルは慌ててフェイトの肩に手をおいた。 くらりと視界が揺れて、とすんとテーブルにお尻が付く。 テーブルに座らされたネルの足が、ぶらりと宙に揺れた。 「立っているのも辛いクセして、どうしてそう無理ばかりするんですか。」 「してないって…いっているだろう?」 少しフェイトは機嫌が悪いのかもしれない。 口調がいつもより厳しい。 大人しくテーブルに座って、腰の横に手を置いて…ネルは口をつぐんだ。 無言でフェイトはネルの足元に跪く。 すっと…その白く長い指で、ネルの細い足首を優しく掴んだ。 添えるように掴んだだけなのに…ネルが僅かに眉根を寄せる。 苦痛に歪んだネルの顔に、フェイトは再び溜息をついた。 「ちょっと触れただけですよ?一体どれくらい我慢していたんですか。」 「別に…我慢なんてしてないよ。それにちょっと掠っただけだからね。そんなに大事じゃないよ…。」 するするとフェイトがネルのブーツを脱がしていく。 白く細い、引き締まった脚が露になっていって…足首の少し上のところにまかれた、白い包帯が現れた。 僅かに血が滲んで色付いたその包帯に、ネルもフェイトも眉を寄せる。 先程の戦闘でネルは脚にケガをしたのだ。 いつものように大きく飛び跳ねて…大刀を投げつけて。 着地して戻ってきた大刀を受けとる。 それがいつものパターンだったのだが……。 足元…着地しようとしたところにモンスターがいた。 だからバランスを崩しそうになりながらも、モンスターを上手く利用して着地して…………大刀のことをすっかり忘れていた。 もともとネルのところに戻ってくるように投げたモノだから、きちんと戻ってくるソレが………ネルの脚を霞めたのだ。 幸いそこまで傷は深くなく、紅い線ができて…血が垂れてきた。 その程度だったからネルもフェイトも仲間の皆もそこまで心配はしていなくて。 包帯をまきつけて、その場は終わったのだが……。 ひょこっと。 脚をぎこちなく動かすネルに、フェイトは気がついた。 ネルの顔色が悪いのにも気がついた。 その戦闘からもう大分たった後だったけれど…気がつけたのだ。 慌ててフェイトは街に戻ると言い出し、なんとか戻ってきて宿をとって今にあたる。 「……包帯を…代えましょう。」 するするとフェイトの手が包帯を解いていく。 手慣れたその仕種を、ネルはただじっと見詰めていた。 解きながら器用にまた使う時のために丸めていくフェイトの指。前から思っていたけれど、フェイトはわりと器用だと思う。 傷に近付くと、ぺりっと…血が乾いたせいで張り付いた包帯が剥がれるのが少し苦痛で。 「つっ……。」 「大丈夫ですか?」 「ああ…。」 ふわっと…包帯が解かれて脚が露になった。 人前で脚を出したのは久しぶりかもしれない。 ネルは僅かに頬を紅く染めた。 そっと…支えるようにフェイトがネルの足首を掴む。 「フェイト…?」 「折角綺麗な脚なのに…勿体無い。傷が残らなければいいけれど…。」 「傷くらいたいしたことないよ。」 「………。」 「フェイト?」 「………。」 無言の空間が、苦しかった。 ネルは少し困って、どうしようか迷った。 でも動くことも出来ないし、フェイトは自分の脚を見ているため顔も見えないし…。 そしてなんだかだんだん…フェイトの視線が苦しくなってきた。 どきんどきんと鼓動が高鳴り、息苦しくなってくる。 (あれ…?) じんわりと…胸の奥が痺れてくる。不思議な感覚。 脚に自然と力が入った。 「フェイ……っ!?」 びくんっと、背中が跳ねた。 突然足首にねっとりとしたモノを感じて、慌てて下を見ればおそらく…フェイトが自分の傷口を舐めている。 脚にかかる熱い吐息と、ねっとりとした感触でわかった。 「ちょっとあんた!何やって……!!つぅっ…!」 傷に唾液がしみて、ネルは再び苦痛に顔を歪める。 しかし…どくんどくんと鼓動は益々高鳴り、身体は熱く火照ってくるのだ。 恥ずかしいという気持ちが、身体を熱くさせた。 「フェイトっ!!やめっ……!!」 脚を引こうにも、先程とは違ってぎゅっと強く掴まれているからビクともしなかった。 「フェっ……んっ……!!」 そして再びびくりとネルの背中が跳ねる。 傷口を舐めながら、フェイトが指をネルの脚に滑らせたのだ。 足首から膝裏へと…掠めるように指先を滑らせていく。 ぞくぞくっと足元から、何かが這い上がってくるような感覚がして、ネルはくらつく頭にテーブルについた手に力を込めた。 「あんた冗談はっ…!」 怒りながらも身体に力が入らない。 膝裏にあった指先は、いつのまにかてのひら全体になっていて内太腿へと移動している。 ネルの太腿にある紋章をなぞる様に摩ると、スリットの隙間から指を忍び込ませた。 「フェイトっ!!」 フェイトの唇が、舌が、いつのまにか傷口からどんどん上昇してきていた。それはさっきまでの指の通ったところを後を追う様に移動していって。 「ネルさん…。」 どきんっと、ネルの胸が音を立てた。 今聞いたフェイトの声は、今まで聞いたコトもないくらい切なく、色っぽく艶を含んでいた。 そんな熱っポイ声で、名前を囁かれたコトなんてない。 「フェイト……?」 とたんに胸に不安が広がる。 こんなフェイトは知らない。 こんなフェイトは恐くて。 「あっ…ン…!!」 ぎゅっと、ネルは瞳を閉じる。 内太腿を噛まれた瞬間、勝手に声が出てしまっていた。 とたんにフェイトの指が、唇が、性急に動き出す。 ネルの甘く柔らかな脚を貪るように激しく動きながら、スカートの中へと潜り込んできて……。 「フェイトっ!!!ちょ…そこはっ……!」 「黙って。」 熱く囁かれると、その吐息が脚にかかって辛い。 はらりと捲られて、ネルの黒い下着が現れた。 それにフェイトはこくりと唾を飲みこむ。 そっと…中心に触れると、下着越しでもわかる…ぬるりとした感触に一瞬驚いて。 ちらっと顔を上げれば、顔を真っ赤にさせて俯くネルの姿があった。 どくんっと湧き上がってくる愛しさに、フェイトがそっと…ネルの頬に手を伸ばす。 「ネルさん…。」 びくんっと…ネルの頬が緊張する。 それにふっと笑って、フェイトは立ち上がった。 テーブルに座るネルを、キツク抱きしめる。 「フェイト?」 「ネルさん。好きだよ。」 小さく震えるネルの身体を優しく抱きしめて。 フェイトは真っ赤な頬に唇を寄せる。 頬や瞼や鼻に口付けて、抱きしめた細い腰に腕をまわして。 「ネルさんは?」 「………私…は…。」 困った様に逃げるネルを、逃がさない様に瞳で追い掛けて。 こくりとネルの喉が動いて、閉じた瞳が開かれた。 「わからないよ…突然…そんなことを言われても…さ。」 「じゃあ、好きか、嫌いか。ならどっち?」 「ズルイ質問だね。」 「ズルくもなるよ。だってネルさんを失いたくないから。」 口調はおどけているのに、目は笑っていなかった。 そんなフェイトに、ネルはどうしようもなく引きつけられた。 引きつけられて…思わず頷いてしまいそうになる。 「……わかりました。手を…放します。」 「………。」 自分を包みこんでいた温もりから解放される。 ネルはさっきまでの息苦しさから解放されて、軽く息を吸い込んだ。 空気が、気持ち良かった。 「じゃあ、この続きはまた今度ということで。」 「……次はないよ。」 「ありますよ。」 ははっと笑うフェイトが、落ちていた使っていない包帯を広いあげる。 それにどきりとして、ネルは脚を引こうとしたが…ぎゅっと掴まれる。 するすると…包帯がまかれて…傷口が見えなくなっていって……。 「この傷がなおる頃にね。」 面白そうに笑ったフェイトに、ネルはなんて言ってかえして良いのかわからなかった。 あとがき |