■■■ 波
「つっ………。」 「ネルさん?」
リズムの良いネルの包丁さばきの音が途切れる。 そしてその瞬間、聞きなれない声が聞こえて、フェイトははっと顔を上げた。
そこには指先を口に咥えるネルの姿があった。
料理の得意なネルの、珍しい姿だった。
「指を…切ったんですか?」 「まぁね…。」 「見せてください。」 「……大丈夫だよ。」 「いいから!」
ぐいっとネルの腕を掴むと、フェイトはその指先を見た。 ネルの唾液で光る指先に、うっすらとついた紅い線。 じわりじわりと血が滲みでてきていた。
「今ヒーリングを使うか……。」
言いかけたネルの瞳が見開かれる。 それもまた珍しい光景。
「っ………!」
無口だからじゃない。 驚いて言葉がでなかった。
フェイトの舌の感触に、ネルは眉を寄せる。 いつものようにマフラーに顔を隠すように口許を埋めて、 自分の指先を口に咥えるフェイトを見た。
その視線に、フェイトがそろりと顔をあげる。 指先を口から離すと、にっこりと微笑んだ。
「折角綺麗な指なのに、アトが残ったら大変です。今、薬をもらってきますね。」 「いらないよ。」 「いいから。」
にっこりと笑って、でも有無を言わさせない口調でフェイトが言う。 ネルはすとんと近くのイスに座ると、自分の指先を見詰めた。
フェイトは隣の部屋にいってしまってもういない。
フェイトは時々ネルにも想像つかないことをしたり言ったりする。 その度に、ネルの心臓は大きく音を立てるのだ。 ずっと昔…そう…もうとっくの昔に忘れてきた感情。
笑うことも。 怒ることも。 戸惑うことも。 悲しむことも。
感情なんてとっくの昔に自分の奥底に封印したもの。
心が揺らぐことは『死』を簡単に連れてくるから。 だからそうならないように、封印してきていた。
でも。
フェイトにあってから。 ときたまこうやって驚く。 驚いて、心臓が跳ねて、よくわからない気分になる。
何を言われても、 何をされても、 何があっても。
こんな風に感情が働くことはなかったのに。
フェイトといると、普段は穏かな海のような心の波が 時々フェイトが何かをしたり、何かを言ったりした時に 台風の時の波のように荒れるのだ。
それが何故なのかはわからない。
隠密として、これから仕事に支障がでるかもしれない。 それが心配だった。
ふっと先ほどの指先に目をやる。 フェイトの唾液だろうか? てらてらと光る指先を不思議そうにネルは見詰めた。
傷口からはもう血は出ていなかった。
そっと………無意識のうちに、その指先を口に咥える。 生暖かな指先を、ぺろりと舐めて…口からまた出して。
再びたぷんっと心の波が揺れる。
「……甘い。」
そう呟くとネルは再びマフラーに口許を埋めた。
あとがき
フェイネルって…甘くならないと思う 相手がネルさんだから……… なんか私の中のフェイネルって 世の中のフェイネルスキーさんと違うみたい。
フェイト→闇 ネル→光
ってイメージがあって フェイトはネルさんを手に入れる為なら何でもするし ネルを守る為なら何でもするって感じ で、ネルはフェイトに守られてるのを知らないの 光だから、前しか見えてない 自分が曲がったことは嫌いだから、曲がったコトがわからないんですね ある意味純真
恋愛も知識としてしか知らない フェイトがネルを欲しいって気持ちがわからないと思う。 好きな人を欲する気持ちって言うか ドロドロしたのはわからなそう…
で自分の中に芽生え始めるそういう感情に戸惑いそうです。
2003/06/01 まこりん
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