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「つっ………。」
「ネルさん?」

リズムの良いネルの包丁さばきの音が途切れる。
そしてその瞬間、聞きなれない声が聞こえて、フェイトははっと顔を上げた。

そこには指先を口に咥えるネルの姿があった。

料理の得意なネルの、珍しい姿だった。

「指を…切ったんですか?」
「まぁね…。」
「見せてください。」
「……大丈夫だよ。」
「いいから!」

ぐいっとネルの腕を掴むと、フェイトはその指先を見た。
ネルの唾液で光る指先に、うっすらとついた紅い線。
じわりじわりと血が滲みでてきていた。

「今ヒーリングを使うか……。」

言いかけたネルの瞳が見開かれる。
それもまた珍しい光景。

「っ………!」

無口だからじゃない。
驚いて言葉がでなかった。

フェイトの舌の感触に、ネルは眉を寄せる。
いつものようにマフラーに顔を隠すように口許を埋めて、
自分の指先を口に咥えるフェイトを見た。

その視線に、フェイトがそろりと顔をあげる。
指先を口から離すと、にっこりと微笑んだ。

「折角綺麗な指なのに、アトが残ったら大変です。今、薬をもらってきますね。」
「いらないよ。」
「いいから。」

にっこりと笑って、でも有無を言わさせない口調でフェイトが言う。
ネルはすとんと近くのイスに座ると、自分の指先を見詰めた。

フェイトは隣の部屋にいってしまってもういない。

フェイトは時々ネルにも想像つかないことをしたり言ったりする。
その度に、ネルの心臓は大きく音を立てるのだ。
ずっと昔…そう…もうとっくの昔に忘れてきた感情。

笑うことも。
怒ることも。
戸惑うことも。
悲しむことも。

感情なんてとっくの昔に自分の奥底に封印したもの。

心が揺らぐことは『死』を簡単に連れてくるから。
だからそうならないように、封印してきていた。

でも。

フェイトにあってから。
ときたまこうやって驚く。
驚いて、心臓が跳ねて、よくわからない気分になる。

何を言われても、
何をされても、
何があっても。

こんな風に感情が働くことはなかったのに。

フェイトといると、普段は穏かな海のような心の波が
時々フェイトが何かをしたり、何かを言ったりした時に
台風の時の波のように荒れるのだ。

それが何故なのかはわからない。

隠密として、これから仕事に支障がでるかもしれない。
それが心配だった。

ふっと先ほどの指先に目をやる。
フェイトの唾液だろうか?
てらてらと光る指先を不思議そうにネルは見詰めた。

傷口からはもう血は出ていなかった。

そっと………無意識のうちに、その指先を口に咥える。
生暖かな指先を、ぺろりと舐めて…口からまた出して。

再びたぷんっと心の波が揺れる。

「……甘い。」

そう呟くとネルは再びマフラーに口許を埋めた。




あとがき

フェイネルって…甘くならないと思う
相手がネルさんだから………
なんか私の中のフェイネルって
世の中のフェイネルスキーさんと違うみたい。

フェイト→闇
ネル→光

ってイメージがあって
フェイトはネルさんを手に入れる為なら何でもするし
ネルを守る為なら何でもするって感じ
で、ネルはフェイトに守られてるのを知らないの
光だから、前しか見えてない
自分が曲がったことは嫌いだから、曲がったコトがわからないんですね
ある意味純真

恋愛も知識としてしか知らない
フェイトがネルを欲しいって気持ちがわからないと思う。
好きな人を欲する気持ちって言うか
ドロドロしたのはわからなそう…

で自分の中に芽生え始めるそういう感情に戸惑いそうです。

2003/06/01 まこりん



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