■■■ 窓際の恋


「彼女を、好きなのね?」




途切れた会話の途中で。
ふっと問うてみた。
空虚な心のまま顔を上げれば、驚いたように見開かれた彼の瞳。
それに思わず笑いたくなった。
笑いとばしたいくらい、ばかばかしい反応。

「え?え?彼女って??」

オロオロする彼に、ばかばかしくって自分の問い掛けを後悔した。

「彼女って言ったら、この星の、あの人しかいないじゃない?」

「ええええっと、ネ、ネ、ネルさんっ!?」

「そ。見ていればわかるもの。」










窓の外をなんとなく見てみたら、蒼い髪の毛が見えて。
なんとなく。なんとなくだけれど、ただ無意識のままじっとその髪の毛を見ていた。
自己鍛錬。
なんて彼には似つかわしくない言葉。
それでいて、ある意味とてもよく似合う言葉。
人前で努力を見せない彼らしいといえば、らしい。
裏庭でこっそりと、剣を振るうその姿。

汗に濡れる額を、腕で拭って。
張り付いた前髪を指で拭って。
彼は一心不乱に剣を振っていた。

そのワケが、なんとなく………わかっていて。

その日の戦闘で、ネルがケガをした。

フェイトの、ほんの少しの不注意。
敵に襲われそうになったフェイトを庇って、ネルがケガをした。
それに対する、自己嫌悪からくるものなのだろう。
ネルがケガした後の、フェイトの取り乱しようといったらなかった。

一心不乱に剣を振るう、その姿。

見惚れていたのだと思う。
自分は。
その彼の姿に。

上気した頬。
汗で濡れる額。
流れ落ちる、汗の雫。

ただ、ただ。じっと。

自分は彼を見詰めていた。

どうしてかなんてわからない。

ただ、瞳が奪われて。
心の中はからっぽで。
ただ、ただじっと。

そして彼の動きが止まって。
汗を拭う彼の姿を見た瞬間。

好きだ。と。

やっぱり、自分は彼が好きなのだと。

どこが?と聞かれたら答えられない。

ただただ、惹かれるのだ。

どうしようもなく。

その瞳。
その姿。
その存在に。

「………。」

剣をそのまま鞘に戻して。
彼が何かを呟いた。
声は勿論聞こえないから、なんて言ったのかなんてわからないけれど。

片手を上げて、少しだけ走る彼。

笑顔。
破顔した、その彼の顔に。

ああ―――。

と、思った。

彼の目の先にいる、紅い髪の女性。

会話なんて聞こえなくても。
聞こえないからこそ。

その雰囲気に、胸が苦しかった。

窓際で揺れる、カーテンを握り締める手に力が込められる。
わなわなと震える手を、そのまま胸に引き寄せた。

誰に聞かなくてもわかる。
彼ら自身が自覚していなかったとしても、見ていればわかる。
彼らが恋人同士でいなくても、見ていればわかる。

お互い、どうみても、好きあっているのではないか。

彼のあんな顔も、彼女のあんな顔も。

みたことがない。

近寄りがたい、雰囲気。

甘くも無い、特に触れ合っているわけでもない。

けれど、彼らの醸し出す雰囲気は。

私の胸を、きつく、切なく、しめつけて。

ゆっくりと、彼の指が滑らかに動いて。
彼女の髪の毛についた枯れ葉を掴む。
ふっと見詰め会った二人が、ぱっと顔を叛けた。

ガクガクと震える身体。
崩れ落ちそうな身体を、私は必死に堪えた。










「そうかー。やっぱりマリアにはバレちゃったね。」

あはは。と照れたように笑う彼に、やっぱり後悔した。
なんで自分はあんなことを聞いてしまったんだろうか。
答えなんて聞く前からわかっていたのに。

ここで今、私の想いを口にしたら。
彼は一体どんな反応を示すのだろうか?

「好きよ。」

「え?」

悪戯心に火が付いて。

ふっと。呟くように、想いを口にする。
固まった空気が、痛かった。

「好き。」

「マリア?」

「あなたが好きよ。」

ざあっと…風が吹いた。
風が、二人の間を駆け抜けた。

「あなたが彼女を好きでも。」
「マリ……。」

困惑したような彼の瞳に、吹き出す。
ばかばかしい。
ばかばかしいくらい、わかりきった反応。

「冗談よ。」
「冗談!?マリア、君はっ……!」

怒ったように声を荒げる彼に、再び笑った。
怒ったフリして、瞳が安堵の色を示してる。

「嘘よ。」

私の言葉に、彼の瞳が困惑の色に揺れた。

どっちが?

言いたげな唇が、うっすらと開いて。
耳まで真っ赤になった彼が、口許を手で覆って私から視線を逸らす。

「嘘だから。気にしないで。ただ、からかいたかっただけ。」

笑ってあげた。
私に出来る最高の笑顔で。
笑ってあげた。

どっちが嘘かは一生おしえてあげない。

そしたらホラ。

やっぱり彼は耳まで真っ赤になって、私の肩を軽く叩いた。

叩かれた肩が、熱を帯びて。

熱かった。



あとがき

マリア→フェイト×ネル
タイトルはまたまた某曲より。
聞いてると、どうしても
マリア→フェイネルなイメージを受けます。
でもなんだかねー…
歌詞は全然違うんですが。

2004/06/20 まこりん




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