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「何を…しているんだい?」

真っ白いスケッチブックに、人影が映る。
フェイトはその影と掛けられた言葉に顔を上げた。
そこには決して下品ではない…深みのある紅い髪をした女性が、不思議そうにフェイトの手元を覗き込んでいる瞳があった。

彼女が他人に関心を示すのは珍しい。
任務以外のことには興味を示さない彼女が、不思議そうに自分の手元を覗き込んできているのだ。
それが自分の好意を寄せる女性だから、心なしかフェイトの顔が綻んだ。

「絵を描いてるんですよ。見ますか?ネルさん。」
「絵…?」

フェイトの応えに、それでもまだ不思議そうにネルが首を傾げる。
そのネルにフェイトはスケッチブックを手渡した。

「うん。」
「絵を描くのが好きなのかい?…意外だね。アンタはそういうことには興味が無いと思ってた。」
「それは僕のセリフですよ。」

ははっと苦笑して、フェイトがネルの長いマフラーにそっと触れる。
それを見たネルの身体が、ぴくりと小さく反応した。

「僕のすることに、興味が無いと思っていました。」
「…人を仲間に無関心な人間みたいにいうんだね。」

フェイトのセリフに、ネルが機嫌を悪くしたのか眉を寄せる。
そして鋭い瞳で、フェイトを睨んだ。
そんなネルにフェイトは再び苦笑して、マフラーを掴む手をするすると下降させて…。

フェイトの手から零れるマフラーの端が、僅かにゆらゆらと揺れる。

視界の端に映るそれが、何故かネルの胸を早鐘の様に鳴り響かせていく。
どくんどくんと鼓動が大きくなり、ネルはどう反応していいのか困った。
そんなネルにフェイトは笑う。
何を考えているのか、わからない笑みで。

「嬉しいんですよ。あなたに気にしてもらえて。」
「………。」
「あなたが好きだから。好きな人に興味を示されるのは嬉しいんです。」

一瞬何を言われたのかわからなそうに、ネルの瞳が揺れる。
次の瞬間意味がわかったのか、ネルがばっと身をフェイトから引いた。
マフラーがばっとフェイトの手から逃げて、ふわりと舞う。

口許をマフラーに埋めて、ネルはフェイトを睨みつけた。

「悪い冗談はよしなよ。そんなこと…」

ばさりとフェイトのスケッチブックが落ちる。
それに一瞬瞳を奪われて、ネルは口をつぐんだ。

「冗談だと思いますか?」

カタン…と音がして、フェイトがイスから立ち上がる。
それに何故か自然と、ネルの身体がピクリと反応を示す。
戦場でも感じたことの無い、何とも言えない空気。

ネルは一歩足を引くと、床に落ちたスケッチブックを見た。
風にパラパラとめくれて見えるページの大半はクリーションの案だったり、設計図だったり。
それでもその中に、あきらかにそれらとは違う人物画があった。
さっき落ちた瞬間、もしやと思ったものが、今ならはっきりと見えた。

それはネルにだって『誰』なのかわかる。

「これは…。」

どくんっと心臓が波打った。
自分でもいつ描かれたのか気がつかなかった。
それとも自分がいない時に、フェイトはモデルなしでも描いたのか?

ぞくりと背中が凍る。

目の前で笑う青年の、瞳が恐かった。

「まぁ…仲間…って言ってくれただけでも嬉しかったんですけれど。」

そのネルの様子にくすくすと笑いながら、フェイトは床に落ちてページの捲れたスケッチブックを拾い上げた。
小脇に抱えて、ネルにくるりと背を向ける。

「そんな風に構えないでください。僕はあなたにそんな反応をしてもらいたくて言ったワケじゃないんですから。」

ひらりと手を振って、フェイトが部屋から姿を消す。
残されたネルは、ぞくりと鳥肌のたった両腕を自分の両手で摩った。

「……いつものアイツじゃないみたいだった…。」

突然後から何かに見られているような気配を感じる。
ネルはこくりと唾を飲み込むと、呼吸を整え一気に振り返った。

「っ………!」

窓の外では血のように紅い満月が、真っ暗な空に浮んでいた。

汗ばむ掌で握り締めた短刀が、ずるりと落ちそうになるのを慌てて握り締め直して。
ネルは飲み込んでいた吐息をゆっくりと吐き出す。

『あなたが好きだから』

フェイトの声が、耳の奥で木霊した。




あとがき

ダーク!!!???
な…何事!?腹黒フェイトだな〜って
イメージがもう定着してるから!?
私の中で!!!
恐っ……!

フェイト、ストーキングしてるよ…
ラブラブでもなんでもないし!
恐いもの書いちゃった…

たまにはいっか。

いいのかよ!!

2003/06/20 まこりん



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