■■■ 雨音空間


ザー ザー ザー

一向に降り止まない雨の音が、窓を締め切っているというのに部屋の中まで聞こえてくる。
そんな激しい雨の日は、フェイトたちもそのまま町にとどまっていた。
普段なら目的地に向かって移動したかもしれない。
けれど病人がいたから。

そう…病人…である、ネルは宿屋のベットに潜りこみながら、
熱のある頭でボーっと窓の外を見ていた。

「気が付かれるとは…思わなかったんだけどね。」
「何かいいましたか?ネルさん。」
「いや…。」

喉が痛くて掠れる声に、ベットの横に腰掛けていた青年が顔をあげる。
書いていたスケッチブックから顔をあげると、ネルの顔を心配そうに覗き込んでくる。
そのフェイトからネルは逃げるように、窓の外を見たままだ。





あと少しで今いる街につく…という直前。
ネルは自分の体調が悪いのに気がついた。
ずっと雨の中、歩き続けていたからかもしれない。

それでも動けない程では無かったし、少し熱があるかな…?
程度だったので、あまり気にしていなかった。

そんな自分に、フェイトが言ったのだ。

「ネルさん。僕の前でくらい、素直になってくださいよ。」

なんのことだか全然わかならなかった。
突然襲ってきたモンスターを一掃して、持ってた短剣を鞘に戻し、懐にしまいこんだ直後だったから。フェイトがなんのことを言っているのかわからなくて、自分はただ無言でフェイトを見返した。

「ちなみに無理もだめです。」
「……なんのことだい?今…特に無茶な戦い方はしていなかったと思うけど。」

そう言って再び元の街道に戻ろうとしたところ、手首をぎゅっと掴まれた。
突然のことでバランスを崩して、倒れる…と思ったら、フェイトの胸にもたれかかってしまっていた。

「な…なにするんだい!?」
「ホラ、こんなに簡単にバランス崩してるし、身体が熱い。」
「え…?」

よく考えたらあれくらいでバランスを崩してるあたり、やっぱり体調は良くなかったのかもしれない。そう思ったら、フェイトが言っていた言葉の意味がわかった。

「……別に無理なんて…。」
「してる。身体熱いですよ。熱…あるでしょう?」

ぎゅっと抱きしめられる。
突然の抱擁に、身体が熱くなった。

「それはアンタがこんなことするから……!!」

ぐいっと胸板を押して、それでもフェイトの腕の中から逃れられない。
今までなんだか甘いお坊ちゃんかと思ってたフェイトが、急にオトコの人みたいな感じがした。
薄いとばかり思っていた胸板は堅く、抱き締められてる腕も堅く太くて。
自分のものとは違う、その身体を突然意識した。

「放しな!」
「次の街に入ったら、ちゃんと具合よくなるまで無茶しないって約束するなら放します。」
「……わかった。」

耳元で聞こえたフェイトの声に、身体が痺れる。
なんとか言葉を口にすれば、フェイトは約束通りその腕を離してくれた。

「ちょっと名残惜しいけどね。」
「……ばかだね。うつるよ。」
「ネルさんの病気ならもらってもいいよ。」
「………あんたやっぱりバカだね……。」

2回目の『バカ』は、なんだか1回目の『ばか』とは感じが違っていた。
それを口にしたのは自分なのに、どこか不思議だった。





「………雨が…止まないね。」
「たまにはこうやって宿でゆっくりするのもいいよ。」

自分を気遣うフェイトの言葉に、何故だか胸が切なくなる。
今のうちにと…クリエーション用の設計図をスケッチに引いてくフェイトのペンの音が、雨音にまざって心地良い。

とくんとくんと、自分の心音と重なって、そこから暖かな何かが広がっていく。

「フェイト。私はもういいから…あんたも自分の部屋に戻ってゆっくりしな。」
「すぐそうやって子供扱いする。」
「そういうわけじゃ…ないけど…。」

ネルの困ったような顔に、フェイトは軽く苦笑した。
ぱたんとスケッチブックを置いて、ゆっくりとネルの顔に指を伸ばす。
そっとネルの滑らかな肌に触れて…頬を優しく撫でた。

「病気の時は心細いだろ?素直になれって。」

「……アンタこそ、私を子供扱いしてないかい?」

「ううん。恋人扱い。」

「…………あんた本当に…ばかだね…。」

何度口にしたかわからないセリフを口にすると、ネルは自分の頬に触れているフェイトの掌に唇を寄せた。




あとがき

ネルさんの「ばかだね」は
照れ隠しなので…
というか、フェイトの聞いてて恥ずかしいセリフに
なんて反応して良いのか困った時の言葉です(笑)

あーはやくSO3買ってこよう〜
以前お借りして1度プレイしただけなので
内容とか街の名前が曖昧…

これはED後の二人でもOKですね〜
任務中のある日みたいな!

2003/06/30 まこりん



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