■■■ 雨感温度


ザー ザー ザー

最初は凄く耳触りの雨音だったし、濡れた服はずいぶんと重くなってしまって動きにくかったから…。不快なことこの上なかったけれども。もう三日三晩続いているこのうっとおしい雨にも、段々と慣れてきてしまっていた。

そんなある日の戦闘の後。

ふっと…戦闘中に背中にとんっと…ネルさんの背中が当たった。
その時の…違和感。

ふっと感じた気配に降りかえれば、頬を淡い桜色に上気させて、潤んだ瞳で。
ダガーを握り締める手でバランスを取ると、いつものようにその長い脚でモンスターを蹴り上げていた。
いつも通りの戦闘スタイル。

それでも…いつもとは違うそんな雰囲気。
雨に濡れた深い赤髪が、ネルの白い頬に貼りついていて。
それをうっとおしそうに腕で拭い、瞳にはいりそうになる雨を拭って。

そんなネルさんに向かっていくモンスターを、蹴り上げる。
モンスターは雄叫びを上げると、そのままその場に崩れこんだ。

まるでスローモーションのような世界の中で、フェイトはゆっくりとネルに近付く。
ふっとフェイトの視線が、ネルの腕を捉えた。
ダガーについた血を拭うネルの腕が、僅かに震えていた。

「ネルさん…?」

崩れ込んだモンスターを見詰める瞳が、どこか虚ろで、何故か潤んでいて。
上気した頬に貼りついた髪から滴り落ちる雨水が、ネルのマフラーを濡らしていた。

「ネルさん…!」

ちょっと大きめに声をかける。
それでもネルは自分に振り向かない。

雨に濡れているからだろうか?
いつも以上にどこか綺麗な印象を受ける。

そこで…初めて、背中が触れた時の違和感の理由に気がついた。

戦闘で息があがったから頬が紅いんじゃない。
瞳が潤んでいるのも、戦闘の興奮からじゃない。

雨に触れたその姿で、中々気がつけなかったけれど。

ネルは、熱が…あるのだ。

強情で弱気なところを口にしないネルだから、自分からはいいださなかったのだろう。
フェイトは軽く溜息をつくと、ネルの前にたつ。

「ネルさん。」
「ん?あ…ああ。なんだい?」
「僕の前でくらい、素直になってくださいよ。」

自分の言葉に、ネルの瞳が困惑の色で揺れる。
そこでまたフェイトは溜息をついた。
自分から言いださなかったのではなく、自分でも気がついていないだけなのかもしれない。
ネルなら…十分ありえるような気がした。

「ちなみに無理もダメです。」
「……なんのことだい?今…特に無茶な戦い方はしていなかったと思うけど。」

やっぱり自分で自分の体調を良くわかっていなかったらしい。
これだから…目が離せ無いのだ。ネルからは。

自分の言ってる意味がわからずに、歩きだそうとしたネルの細い手首を掴む。
強く掴んだら折れそうなその腕は、いつもダガーを自由自在に操る姿からは想像できないほどに細く儚げだった。
そして軽く引っ張ると、大人しく自分の腕の中にネルが倒れ込んでくる。
これもまた…いつものネルらしくない。
それに…抱きとめた身体が………熱かった。

熱く熱を帯びた身体が、小さく震えている。

こんなになってるのに、どうして気がつかないんだろう?

「な…なにするんだい!?」
「ホラ、こんなに簡単にバランス崩してるし、身体が熱い。」
「え…?」

往生際の悪いネルに苦笑する。
心配で仕方無い女性だった。
自分で自分の身体の調子に気が付かない彼女を、守れるのは他にも無い、自分だけだ。

「……別に無理なんて…。」
「してる。身体熱いですよ。熱…あるでしょう?」

自分の腕の中から逃げようとするネルをぎゅっと抱きしめる。
益々ネルの身体の熱を感じて、その熱さに自分の胸が苦しくなった。

「それはアンタがこんなことするから……!!」

耳まで真っ赤になって抗うネルが、可愛かった。
少なくとも、この真っ赤な顔は熱のせいだけでは無いのだろう。
ネルは照れるといつも声を荒げるから、こんな時の彼女がフェイトは大好きだった。

抱きしめた身体の細さ、熱さにふっと瞳を細める。

「放しな!」
「次の街に入ったら、ちゃんと具合よくなるまで無茶しないって約束するなら放します。」
「……わかった。」

ようやく大人しくなったネルに、名残惜しいけれども約束通りに腕を放す。
するりと自分の腕の中から抜け出したネルのマフラーが、はらりと揺れた。
それは水分を含んで重たいはずなのに、簡単にするりと自分の腕の中から逃れて。

「ちょっと名残惜しいけどね。」
「……ばかだね。うつるよ。」
「ネルさんの病気ならもらってもいいよ。」
「………あんたやっぱりバカだね……。」

2回目の『バカ』は、なんだか1回目の『ばか』とは感じが違っているような気がするから。
だからフェイトははにかむ様に笑う。

ネルが自分でも気がついていない、ネルの体調の変化に気が付けた自分を、少しだけどまんざらでもないんじゃないか…そう思った。




あとがき
前回の雨音空間の前のやりとりです
フェイト視点で書いてみたかったので…!!
こんなにきちんと書くなら、雨音空間であんなに
詳しく書く必要もなかったのですが…

あ〜〜フェイネル熱がやばいです!
ヤバイ〜〜(><)!
ネタが溜まりまくってますが
小説書くくらいならゲームする。
そんな日々をおくってしまっている自分がイヤン。

2003/07/13 まこりん



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