| ■■■ 癒しの声 「ならいずれ…誰かがその力を求めてやってきたかもしれない。遅かれ早かれ…ね。それが今だたってことさ。」 とくん…と。 小さく胸が波打つ。 そこから起きた波紋はゆっくりと…確実に。指先までゆったりと伝わって。 「だから、あんたが気にすることじゃないんだよ。」 そう言ってくれたネルの言葉に、身体が金縛りにあったみたいな感じだった。 息をするのも忘れて、目の前で優しく微笑む女性に瞳が釘付けになる。 指先が震えて、唇の先も震えて。 「ネルさん…。」 今にもその細い腰を抱き寄せて、がむしゃらに抱きしめたい。 そんな衝動が身体を駆け巡った瞬間。 「さて、行くか。」 クリフの言葉にはっと我に返った。 慌てて顔をクリフに向ければ、皆がその場にいたことを思い出す。 衝動に駆られて動かなくて良かった。 握り締めたてのひらの汗をぐいっと服で拭って、笑顔を作って。 とくんとくんと規則正しく鳴る胸の鼓動が、指先に伝わる。 「あ、うん。戻ろう、シランドへ。」 ネルの、大切な…綺麗な街へ。 そう言った僕に、彼女はふわりと… まるで花が咲いたように微笑んで小さく頷く。 「ああ。」 その笑顔を守れたことに、心の底から安堵した。 「…僕も意外と簡単な人間だったんだな。」 「なんだ?急に。」 ベットに腰掛けて、ぷらぷらと振っていた脚をそのまま床に降ろす。 ふいっと顔を上げると、訝しそうに眉根を寄せたクリフに向けた顔がつい緩んでしまった。 「さっきまでずっと…罪悪感で一杯だった。僕のせいで…この星にまで…って思って…。でも…。」 「ネルの言葉か?」 「うん。凄いね。ネルさんは。」 「……だな。」 ぱしっと拳を胸の前で掌に当てて、クリフもいつものように笑う。 クリフの返事にまた、何故か嬉しくなって顔は益々緩むばかり。 「俺からしてみればお前も凄いと思うけどよ。」 「どういう意味だよ?」 クリフのセリフにむっとしてフェイトが唇を尖らせる。 それにははっとクリフは笑って、ぽふんとフェイトの頭にその大きな掌をのせた。 その子供扱いするようなクリフの行動に、フェイトは嫌そうに逃げる。 「ネルのあの言葉だけで、さっきまでの真っ青な顔が嘘みたいに幸せそうになってる。」 「そ…それはっ…!?」 クリフの言葉に、フェイトの頬が瞬時に真っ赤に染まった。 わたわたと手を振ると、ぶんぶんと大きく頭を振る。 「別にっ…!」 「いいんじゃねぇの?好きな人の言葉ってのは、それくらい力があるだろ?」 「好きな人って…!!」 「今更とぼけたって無理だっての!大体お前アリアスの時からネルに対して好意もってたじゃねぇか。」 「えっ!?」 「…自分で気が付いていなくても、俺にはバレバレだったぜ?」 にやにやと楽しそうに笑って自分の顔を覗き込んでくるクリフから視線を逸らすと、フェイトは熱く熱を持った頬に手の甲を押し当てた。 燃えるように熱いその熱で、今自分の顔が真っ赤になってるってことが嫌でもわかる。 「………。」 「はははは。ま。頑張れよ。」 ぽんぽんとフェイトの頭を叩いて、クリフは自分達に与えられたシランドの客室を出ていく。 そのクリフの広い背中を見ながら、フェイトは軽く唇を噛み締める。 「………。」 軽く握り締めた拳が、僅かに震えた。 運命はそう。いつだって残酷で。 ネルが好き? ネルが…好きなのだと思う。 言われてみたら、どう考えたって今自分の中にあるこの感情は恋愛感情だ。 この星から出ようとと…決めた矢先に気が付くなんて…。 この星を出る? それはもう2度と…あの優しい笑顔に会えないというのことだ。 どくんどくんと激しくなる鼓動。 軋む胸が苦しくて。 フェイトは唇を噛み締めると、ぎゅっと拳を握り締めた。 あとがき |