■■■ プラン


プリシスを…デートに誘おう!!

作った握り拳にぐっと力を込めると、アシュトンは大きく頷いた。
今日こそ自分からプリシスをデートに誘おうと意気込んでいたのだ。
誘うなら誘うでデートプランをたてなければならない。
アシュトンは真っ白い紙を取り出すと、1日のデートプランをたてはじめた。

「え〜と…?手!手を繋ぎたいなぁ〜。いやいや、そんなことじゃなくて…。こ、腰に手を回したらダメかな…?いけないいけない。そういうんじゃなくて…。」
はたから見たら百面相だ。
真っ赤になったり、いやいやと頭を振ったり。
アシュトンは少し書きはじめたメモ張をびりっとやぶると、くるくるっと丸めてごみ箱に捨てた。

そして新しいページにペンをあてる。
「やっぱりプリシスの大好きなチョコクレープは食べに行かないと…。でもって、ラクールでお祭りがあった筈…!!そして…そして…。」
真っ白なメモ張が黒く染まっていく。
アシュトンは満足そうに微笑んだ後、ピタリ…と、手を止めた。
「………そして………えへへ…♪」
何やらにやりと口許を嬉しそうに歪めて、さらさらっと再びペンを走らせる。
「今日こそがんばろう〜♪」
ペンを机に置くと、がたりと立ち上がる。
何度も書いたデートプランを読んでは、うんうんと頷いた。

「よし!で、デートに誘いに行くぞ〜!!」

と。言葉は勢いづいているけれども、声は何故か小さい。
アシュトンの背中では、ギョロとウルルンが呆れたような目付きで小さく欠伸をして、それにアシュトンは不機嫌そうに眉を寄せた。
「なんだよ二人とも〜!」
「ギャフギャフ!」
「そ、そんなことないよ!今日こそ、ちゃんと誘うんだから!」
「フギャ〜!」
「うわっ!!酷っ!何その投げ遣りな応援!!大丈夫だよ。今日はタルのセールとかしてないから…プリシスおいてふらふら行かないよ!!」
「ギャ。」
「フギャ。」
「もう〜〜!!」
握り締めたメモの切れ端をポケットに突っ込むと、アシュトンは小さくガッツをする。
いつもいつも誘いに行っては…失敗しているけれども、今日こそは…!!!

コンコン…

…と、意気込んだところで、扉が小さくノックされる。
「…はい?」
「アシュトー〜ン?いる〜??」
「プ、プリシス!?」
慌てて扉に近付くと、扉を開けると、そこではプリシスがアシュトンを見上げていた。

大きな瞳でアシュトンの瞳を捕らえている。
その瞳に、アシュトンは顔がかーっと熱くなるのを感じた。
それによってさっきまで言おう言おうと思って、用意していた言葉が、頭からすぽーんと抜けてしまって。
真っ白な頭に、アシュトンは口をぱくぱくさせた。

「今日さ、ラクールでお祭りあるんだって!行こうよ〜!」
「えっ…!?」
プリシスの言葉に、アシュトンはポケットに手を突っ込んだ。
カサリとメモ張の音がする。
「何〜?嫌なの〜???」
「いや、ち、違うよ!うん!行こう〜!」
今誘いに行こうと思ってたんだ。
言いかけた言葉を飲み込んで、アシュトンは小さく溜息をついた。

今日こそ自分から誘おうと思っていたのに……。
そう…アシュトンはいっつもいっつも…!!プリシスを誘うのが1歩遅れていた。
いつもプリシスから誘われてしまう。
せっかく念願の恋人同士になったのだから、自分から誘いたいと思っているのに…。

「はぁ〜。」
「…アシュトン??」
でも折角プリシスが誘ってくれていたのだし、考えたデートプランはまだまだあるのだ。
アシュトンは気持ちをいれかえると、不思議そうに自分を覗き込んできているプリシスに笑顔を向けた。
「うん。行こうか。」

そこではっと…気がつく!!!
(もももも、もしやコレは!!)
ふらふらと揺れるプリシスの腕。
こっそり、こっそりだけれども、こうなったらいいなぁ〜なんて思っていた『手を繋ぐこと』!!
コレが出来る状況なのではないのか!?

「あ…う…。」
そろりと手を伸ばす。
震える手を、柔らかなプリシスの手に伸ばしかけて…アシュトンは手を止めた。
(ダメだぁ〜〜〜。)
そしてやっぱり溜息をつく。
身体中がドキドキいってしまって、手が汗でベタベタして。
こんな状況で手なんて繋いだら、恥かしいし汗ばんでて悪いし…。

と、その時…。
空を握り締めた手を、ふわりと温かいものが包みこんだ。
最初はよくわからなくて、じっと…自分の手を見る…。
そこには信じられないものが映っていた。
「はやく行こ〜!」
ぐいっと…重力に逆らって引っ張られる。

「う…うん…。」

(あああああ…!!手!手!!!!)
余計に身体中が熱くなって、掌が汗ばんでしまう。
(嬉しいけれど、嬉しいけれどっ!!ま、また逃したぁぁぁぁ〜〜!?)
嬉しいけれども、少し淋しくて情けない…。
「なんか汗ばむネ?」
「えっ…!?あっ、ご、ごめんっ!!」
振り返ったプリシスの言葉に、慌ててアシュトンが手を離そうとした。
その手をプリシスがぎゅっと強く握り返して、いつもみたいなヒマワリのような笑顔ではなくて…
「ううん。なんかドキドキして、緊張してるからかな?」
ほんのりと頬を染めて照れた様に笑う。
その笑顔にアシュトンの心臓が跳ねた。
ついつい無意識のうちに抱き締めたい衝動に駆られて、腕を伸ばした・・・。

が。

そこから先に腕が伸びなかった。
理性がそれをとめてしまったのだ…。















「ぎゃふ〜。」
「フギャギャ…。」
「……もうわかったよ…いいよ…どうせ…あの後プリシスにチョコクレープ食べたいって先に言われちゃったし…しかも間違ってリンゴのクレープ買っちゃったし…。」

ラクールのお祭りから帰ってきて…1人(+2匹)でベットにごろんと寝転がると、アシュトンはギョロとウルルンから今日の行動について大人しく苛められていた。

「ギャフギャ…。」
「でもね〜…いいんだ〜!手繋いだし!」
「フギャ。」
「それに…キ、キ、キス…もしたんだから!!」

頬を真っ赤に染めて、アシュトンはごろごろとベットを転がった。
そして思わず勢いがつき過ぎて、落ちそうになりながらもアシュトンはへらっと幸せそうに笑う。
「ギャフー。」
「うっ…!!そうだよどうせ…!!でもいいんだよ!できたんだから!」

そう…。
あの後ラクールのお祭りに行ったのだが、アシュトンがたてた計画のすべてはプリシスが先に言ったり、行動を起こしたり。
チョコクレープはリンゴのクレープになっちゃったし、プリシスが欲しがったオルゴールは、サイフがなくなってしまってプレゼント出来なかった。

ぷくーっと頬を膨らませたプリシスに、必死に謝っていたら…プリシスは吹き出して。
「あはははっ!!いいよもう〜!アシュトンといると飽きないよね〜!」
「ごめんね??」
「いいって…!でも…ね?アシュトン。ヒトツだけ、お願いしてもいい?」
「何??」
やっといつもみたいに笑ってくれたプリシスに、アシュトンはほっと安心してプリシスのお願いに耳を傾けた。

「キスくらいは…アシュトンからしてよね?」

その時のプリシスの顔が、今まで見た中で一番可愛くて、一番愛しくて。
その時の唇の感触と、繋いだ手の感触は、頭が真っ白で全然覚えていないけれども、プリシスの甘い香がしたのは覚えている。

恋人同士になってから、初めてアシュトンがあげた、甘い花の香の香水。
つけてくれているのが嬉しくて、そしてやっぱりプリシスにとても合う香だとおもった。

結局手を繋いだのも、キスのきっかけをくれたのもプリシスだけど。
一応――――唇を重ねたのは自分からだから…いっかな…?

アシュトンはへらっと幸せそうに笑うと、明日こそは自分からデートに誘おうと、結局は無理であろう計画を練るのだった。





あとがき

風水るかさん800HITありがとうございましたv
えっと…確かリク内容は『「俺に付いて来い!」って気が
マンマンなのにプリシスに引きずられてしまうアシュトン』

…………ごめんなさい。
お約束のようにリク内容と出来上がったものが
全然、ぜんっぜんまったく!!違います。
アシュトンかなり幸せそうです。

乙女化!!

ご、ごめんなさい!!
いつか…!余裕ができたら改めてリク内容の
アシュプリを書き上げて捧げたいと思います!
本当に…全然違うわ、甘いわ…!!
ごめんなさい…(涙)

るかさんありがとうございましたv

2002/10/21 まこりん



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