■■■ 伝えたいキモチ






「プリシス…っ!」
「アシュトン…。」


突然後ろから声を掛けられて振り返ると、そこにはアシュトンがいた。
「あ、あのさ。ごめんっ!」
「ほえ?」
突然頭を下げて謝るアシュトンに、プリシスが戸惑って目を丸くする。

「僕、君にへんなコト言っちゃって…!」
「なんで?別に…変なコトじゃないじゃん。」
「でも…あの時、君はすごく…ショックを受けてた。」
「………いいの。アタシが悪かったんだし。」

ぽすんと、プリシスが近くにあったソファーに座る。
そして隣をぽんぽんと叩いた。
それに促されるまま、アシュトンはプリシスの隣に腰を降ろす。
口にしにくそうに、俯いてじっと自分の手を見詰めた。
コクリと口内に溜まった唾を飲みこんで、アシュトンはおそるおそる口を開いた。


「……あの時さ、視界の端にレナに襲いかかるモンスターが見えて、身体が反射的に動いたんだ。
そしたら…その時、君に襲いかかるモンスターにも気が付いて。」


「………。」
じっと、プリシスがアシュトンの横顔を見詰める。
膝の上に顎を乗せて、困ったように笑う彼は、いつものアシュトンで。
「君を助けようとするクロードも見えた。だから、僕は安心して…レナの方を助けたんだ。」
「そっか…。」
へへっとプリシスが笑って、アシュトンもつられて笑う。
でもどこか二人とも辛そうな笑顔。
お互いそれに気が付いてるくせに、気のきいたセリフひとつ言えなくて。


ぽろりと…プリシスの瞳から涙が零れ落ちる。


「プリシスっ!?」
その涙に慌てて、アシュトンがプリシスの腕を掴んだ。


「へへ…ごめん。ごめん…アシュトン。アタシ、すごい…ばかだった…!
本当はね、ずっと、ずっと怖かった。ずっと不安だった。
アシュトンに嫌われちゃったかなって、思ったら怖くて、すごく…怖くて…っ!」


ぽろぽろと零れ落ちる涙を、見られないように俯く。
そのプリシスの肩を、アシュトンは力強く掴んだ。


「怖かったのは僕の方だっ!
僕は君を好きなのに…君が、あんな悲しいコト言うからっ…つい、あんな風に言っちゃって…!」


アシュトンの言葉に、プリシスが驚いたように顔を上げる。
鼻を真っ赤にさせて、瞳を潤ませて、アシュトンが辛そうに自分を見詰めていた。


「だから嫌われちゃったかなって、思ったら、すごく怖くて、すごく後悔してっ…!
どうしようって、ずっと思ってて…!」


今にも泣き出しそうなアシュトンの頬を、そっとプリシスは両手で包み込む。
すんっと、鼻を啜って、目の前の青年を愛しそうに目を細めた。


今、わかった。
あの時、アシュトンが言いたかったコト。
皆が、愛されてるって、言ってくれたコトの意味。


言葉ばかりを求めて、一番大切なコトを見失いそうになっていた自分。


「アタシね、あれからずっと…考えてた。
アシュトンがアタシに言った言葉の意味…なんだろう?って、思って…でもね、なんとなくだけど…わかった気がするんだ…。」
「何…?」
すんっと鼻を啜って、プリシスが微笑う。


「言葉に…しにくいんだけど。キモチ…って、言うのかな?アシュトンを信じるとか、誰かを大切に思う気持ちとか…」


「………」
「ううう〜〜なんて言ったらいいのかなー?!もちろん言葉は大切だけど、キモチの篭ってない言葉はダメだよね?ああんっ!もうっ!何言ってんだろアタシ、混乱してきたよ〜〜!」


うがーっと叫んでぐしゃぐしゃとプリシスが髪を掻き乱した。
くちゃくちゃになった髪の毛を、アシュトンの優しい指が優しく整える。
その指先から伝わる優しさに、目の前のアシュトンの自分を見詰める瞳に、プリシスは再び涙を零した。


「「ごめんね。」」


重なる言葉に、お互い一瞬目を見開いて。次の瞬間幸せそうに微笑って。
「これからもアタシが間違ってたら叱って?」


アシュトンがアタシを好きだと、当たり前みたいに思って、なんてアタシはばかだったんだろう。


アシュトンがアタシを好きな気持ちを疑うようなこと言って、比べることなんて出来ないコトを聞いて、アタシはなんてばかだったんだろう。
 

言葉ばかりを求めて、言葉だけを信じて、アシュトンのコトを信じていなかった。


今ならわかるのに。
言葉よりも、大切なコト。


「プリシス…僕も、僕も間違ってたら、ちゃんと言ってね?」
「うん。言う。だってアタシ、アシュトンのコト好きだもん。」
「ぷりしすぅ〜〜〜。」
「うわわっ!?」


がばりと勢いよくアシュトンがプリシスに抱きつく。
ソファーから転げ落ちそうになって、プリシスが慌てて腕をばたつかせた。
バランスを整えて、ほっと一息付いて…そっとアシュトンの背中に腕をまわす。


「えへへ。」


首に直接かかるアシュトンの吐息に、擽ったそうに肩をすくめながらプリシスが笑う。
その笑いにアシュトンは幸せそうに目を細めた。
「プリシスが、一番好きだよ。」
「うん。アタシも…アシュトンが一番好きだよ。」
抱き締めた身体から伝わる、温かな鼓動。温もり。

ごめんね。

ありがとう。

だいすき。

大切な言葉たち。
大切な人を信じる…その気持ちが一番大事。

あなたと出会えて。
あなたを好きになって。
毎日大切なコトを学んでいくよ。

恋をしなきゃ学べない、好きな人しか教えてくれない。
大切なコト。

耳元で囁いて、二人―――――照れくさそうに微笑った。









あとがき

某所で頂いたリクアシュプリノーマルでした♪
いやん。上手くまとまらなくて…かなりへこんだ小説です・・・
自分の文才のなさを痛感…イタタ
しかも不評っぽくて更にイタタ…
まぁ…うん
書きたいコトが伝わるような
ものを書きたいですね!

2002/09/10 まこりん



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