■■■ コイゴコロ


いつから一緒にいるのかもわからない。
腐れ縁…ってきっとこういうコトを言うんだろう。
気がついたらいつも隣にいた。

嫌いなタイプの…苦手とするタイプの男だった。
でも話してみれば誰よりも気があったし、話しが合ったし。

あいつは割りとクラスで浮いた男だった。
でもソレを気にする様子もなく、我が道を行くような男。

ほとんどの奴がいかない大学に行くことにした時、あいつも希望してるってきいて初めて話したような気がする。

最初に話した言葉はたわいもない、普通の会話。
話し掛けた俺にアイツは笑って言った。
「ボーマン。お前も大学に進学するんだって?」
「ん〜あぁ…。なぁ、タバコ、持ってねえ?」

そう言って淋しいのか口許を手で覆って、空いてる手でぽんっと空の胸ポケットを叩いた姿を…今でも鮮明に覚えている。
一緒の大学に行くって知らなかったらきっと…一生話さなかったんだろうな。

何を考えているのかわからないし、ちゃんと将来を考えてるのかもわからない。
かといって勉強が出来ないわけではなく、むしろ成績は良い方で。
いつ勉強してんのかわからないくらい遊び回ってるようで、実際はどうだったのかは今でもわからないけれど。
自分は割りとクソ真面目に勉強する方だったから、アイツのいい加減なところは正直嫌いで。
でもアイツはいつもいつ勉強してんのかわからないのに、成績だけはよくてそこがむかついてたりした。

あの時アイツに言われるまで気がつかなくて。
思ったコトもなくて。

「お前何専攻?」
「言語学。」
「ふぅん…。」
「お前は?」
「薬草学。」
「そっち系かよ…らしいっちゃらしいな。」
「お前もな。」

いつものようにたわいない会話して、たわいない昼食をとって。
別に合う約束をしてた訳じゃないけれど、気がついたら昼はココで昼食をとるようになってた。
学校の裏にある木の裏。

喉かな昼の時間を、たわいもない会話をして、タバコをふかして…。
ただただ…昼のケダルイ時間を、二人で共有して。
特別でも何でも無い、ただの昼休み。

「い〜んじゃねぇの?二人で同じの専攻してもつまんねぇし。二人で違うことをそれぞれ覚えれば、役に立つだろ。これから先。」

何気無い言葉だったのかもしれない。
そう言って煙草の煙をゆったりと吐き出したボーマンの顔は、いつもとかわらなかったから。
でも…俺は。その言葉になんだかワケのわからない衝撃をうけた。

「二人で同じコト勉強してたら二人揃っても1だけど、二人別々なら揃った時2にも3にもなるしな。」
「…お前らしくないクサイセリフだな。」
「そっか〜?」

そう言って笑ったアイツの顔が、忘れられなかった。
いつの間にかあたり前のように一緒の時を共有してたけど、それまで感じたコトなかった。
コイツの目に、俺がちゃんと映ってたなんて。
こんな言い方は変かもしれないけれど、コイツは他人なんてどうでもよさそうだったから。
いつもマイペースで、自分の世界を持ってて。
誰にでも笑顔だけれど、去るもの追わずで寄ってくるものには一線を引いて付き合ってる…そんな雰囲気をずっともっていたから。

こいつにこう言われて初めて気が付いた。

もしかしたら…これは…友達だと。
ボーマンは俺を友達だと思ってくれてるんだろうか?

俺は?
俺は…今まで…思ったことがなかった。
というか、考えたコトも無かった。

あたり前のように昼を一緒に過ごしていたけれど、約束してたワケじゃない。
どちらかと言えばライバルのような感じで、いつも心のどこかでコイツを追い越したいと思ってた。

友達だと…思ってくれてる?

そう気がついたら、急になんだか胸が気恥ずかしくなって勝手に顔が緩んだ。
嬉しくて、なんだか勝手に笑いそうになる。

繰り返されるたわいもない会話。
お互いの専攻した科目の話。
時には軽く言い争って、ケンカして、意見を述べ合って、認め合って。
ライバルで、友達で、親友で。
気恥ずかしいポジション。

そんな時を何年か過ごして…ある日、アイツは笑って言った。





「卒業したら結婚するよ。」





初めて会話した時と変わらぬ笑顔で。

知らなかった。
コイツに付き合ってる女性がいたコト…。
結婚する程の女性がいたコトを…俺は知らなかった。

がつんっと衝撃をくらって、笑うコトしか出来なくて。

紹介された女性は俺も良く知った女性だった。
柔らかな笑顔をいつもしていて、それでも話す言葉に芯があってしっかりした女性。
有名で、人気者の女性だった。

「へぇ…おめでとう。」

自然と口からでた言葉に、顔に浮んだ笑み。
なんでこんなにショックなんだろうとか、なんでこんなにむかつくんだろうとか思って。
付き合ってた女性がいた事を教えられていなかったからかな?とか
先を越されたからかな?とか。

次の日いつものように昼休みになっても、いつもの木の裏にボーマンは来ていなかった。
なんだかホッとして、それと同時に少し淋しいような感時を得て、1人でタバコをふかす。
揺れる煙。
前は二人の煙草の煙が、交わって天に昇っていってたのに…。

「くそ…。」

何が『クソ』なのかもわからない。
ただ自然と自分の口から零れたのだ。想いが。

そして気がついた。
あたり前のようにここに来ていたけれど、もしかしたら自分はボーマンに会いたくて、ここに来ていたのだろうか?
タバコを用意して、マッチも用意して。
あいつに1本差し出して。

「吸う?」
「おう。」

毎日の繰り返し。

毎日の……繰り返し。
もうあの日々はこないのだろうか…?

「………マジかよ…。」

自分の欲しかった日常が、もう2度と手に入らない状況になって…やっと――――。





自分の気持ちに気がついた。








あとがき

だらだら長いだけのよくわからないものになってしまいました…
おかしい…1番書きたかったシーンが書けませんでしたよ…
どういうことだろうか…………?
書きたかったのは、いつもの場所で昼寝するボーマンに
思わずキスをしそうになって寸止めするキースだったのですが…
ってかキースの口調がわかりませんでした〜
結婚するって言われて初めて
自分の気持ちに気がついたキースさんです

2002/04/18 まこりん



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