■■■ kiss kiss kiss


「な、な、何すんだよぉっ・・・・・!?」

自分の胸の前にある胸を思いきり押すと唇を腕で拭った。
今だにソコに残る感触は、柔らかくて、暖かくて、そして煙草の香り。

「何?って、お前が突然かわいいこと言いだすから。」
「か、かわいいコトって・・・・・別にっ・・・・。」

目の前で尻餅をついている男をキッと睨みつけると、少年は今度は潤む瞳を腕で拭った。

別に泣いた訳じゃない。驚いただけだ。突然のコトに。
そう自分に言い聞かせて、少年は白衣の裾を握りしめた。










数分前。宿屋にとった部屋で、同室になった男と交わした会話。
窓の外にいるカップルがキスをしていたことから始まったそれは、『キス』についてだった。

「あ〜あ。丸見えじゃねぇか。大胆だな。」

ネクタイを緩めて、白衣をベッドに投げつけると、男は窓の外に向かって軽く口笛を吹いた。
なんのことなのかとレオンが窓の外に目をやると、若いカップルが唇を重ねていた。
それに真っ赤になってレオンは視線をずらし、ベッドに腰掛けると唇を尖らせた。

「ばかみたい。キスなんてして、何が楽しいんだろうね。」
「・・・・・・レオン?」
「大体さ、し・・・・舌を入れるってのが、気持ち悪い。その神経がよくわかんないよ。」
「・・・・・・・。」

ベッドに腰掛けながら、ぷらぷらと脚を振っていたレオンの視界の端に、
ぱさりと同室の男のネクタイが落ちたのが映った。
ふっと、顔を上げると目の前には男の顔。










「なんていうか、教えたくなってくる?っての?」
「な、何いってんだよ・・・・・。」

よっと立ち上がって、自分にゆっくりと近付いてくる男に、レオンは身体をピクリと震わせた。
逃げようと・・・・・ベッドの端に片足を乗せる。
そしてそのままずるずるとベッドに乗っかっていった・・・・・。
と。ソコで、ベッドに登るってことはかなり危険なコトだと気がついたが・・・・・・・。

「んっ・・・・・!?」

顎を掴まれ唇を塞がれてしまって、すでに遅かった。

「やめっ・・・・・!」

抵抗しようと口を開いたところで舌が滑り込んでくる。
その感触に慌てて噛み付こうとしたが、顎を強く掴まれていてそれも出来ない。
だから必死で逃げる。
追いかけてくる舌から必死に逃げようと舌を遠ざけ、目の前の男の胸を押した。

舌を絡めるのは諦めたのか、男はレオンの歯列を歯でなぞり始めた。
口蓋を愛撫し、歯列をなぞり・・・・・。
その刺激にふっと・・・・レオンの気が緩んだ時だった。

「んっ・・・・・。」

舌を絡めとられる。
でもすでに身体に力が入らなくなってきていたレオンは、
その舌の動きを愛撫されるままに受け入れていた。

必死に胸を押していた手は、自然と男のシャツを握りしめていて、キスの余韻に浸っている。
男が注ぎこんでくる唾液を必死に呑み込み、
呑み込みきれなかった唾液がレオンの唇の端から滴り落ちた。

それはそのままレオンの喉を濡らし、開いたシャツの裾から入りこみ、
レオンの鎖骨をも濡らした。
その唾液の滴り落ちていく感触がすでに、レオンには初めて経験する甘美な刺激だった。

唇が離れた時にはすでに、レオンの身体にはまったく力が入らなくなっていて・・・・・。
男の腕に支えられる状態になっていた。

「こんなの・・・・おかしいよ・・・・・。」
「何が?気持ちよかったろ?」

男の肩に頭を乗せて、レオンは虚ろな瞳を伏せた。

「だって、キスは好きな人同士がするものだ。」
「だからしたんだろ?」
「え・・・・・・?」

男の言葉に、レオンがはっと顔を上げる。
慌てて男の顔を覗きこむと、そこには満面の笑み。
信じられないボーマンの言葉に、レオンは戸惑いを隠せなかった。

「ぼ、ボーマン?」
「レオンは俺のコト、好きだろう?」

自身に満ちた瞳で、ボーマンがにやりと笑った。
その言葉に、笑みに、レオンは顔が耳まで真っ赤に染まっていくのがわかった。

なんでばれたんだろう?
なんでばれてしまったんだろう?
秘めてきた想い。

自分とは違った知識を持つ人。自分には敵わない知識をもつ人。
頭がいいのに。頭が本当にいいのに、彼はその頭を人々のために使った。
彼のもつ知識は、人の命を助けるものだ。

夜寝る前に。彼がその日倒したモンスターのコトを思って、
煙草をふかしているのに気がついた時、胸がしめつけられた。
同じ命を持つものとして、彼は医学を志したものとして・・・・・・。
そのモンスターを弔っていた。
揺れる煙草の煙に乗せて。

それから胸に芽生えた小さな灯は。
日をおうごとに大きく、確かなものとなっていた。

「違うよっ!きらいだもんっ・・・・!」
「レオン。」

だって、おかしい。
同性なのに。

「ばかじゃないの!?何自惚れてんのさ!」
「レオン。」

だって、間違ってる。
同性だから。

「自分がそんな、モテると・・・・っ。」

びっくりして、レオンの瞳が見開かれた。
目の前にあるのは、ずっとずっと、好きだった人。
今度は重ねるだけだった唇が、ゆっくりと離れていく。

優しい瞳に、自分の姿が映っていた。

ぽろぽろと涙が溢れてくる。
なんでかわからないけれど、泣きたくて。
レオンは鼻を啜り始めた。
ぽんぽんと、背中を叩かれる。
その手が大きくて、暖かくて・・・・更に涙を煽った。

「な?レオン。わかったろ?」
「・・・・・・・・うん。」

好きな人とするキスだから、気持ちが良いんだ・・・・・。

なんでキスするんだろって、思ってた。
でもわかった。今のでなんとなく・・・・・・。

好きって気持ちを伝えたくて・・・・・。
好きって気持ちが溢れ出て・・・・・。





キスってするんだね。





あとがき

ど、どうしよう・・・・。甘くなってしまった・・・・。
なぜ?最初はボーレオ18禁〜v半鬼畜になっちゃうかな?
って思って書き初めたネタだったのに!?
エッチにいく前に話終わっちゃったよ!!?
書きたかったエッチシーンがあったのに!?
仕方無い・・・・これはまた別の機会に・・・・。
そしてまたキスネタかよ・・・・・私(汗)。

いかがでしたでしょうか?
書いた本人もビックリな甘さでございます。
最近レオンがなんか書きやすいんだか、書きにくいんだか・・・・・
わからなくなってきました(汗)。

ではでは!読んで下さった方、ありがとうございました〜v

2002/03/20 まこりん



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