この唇も
この小さな胸も
誰にも見せたコトのない場所も
全部、全部、あなたのもので
あなたに知って貰いたい場所で
あなたを感じたい場所で
いつまでたっても与えられない愛に
気が狂いそうになる。
■■■ ハザマ
引っ張られた白衣から伝わる震えと、レナの頬を零れ落ちる沢山の雫。
ボーマンはゆっくりと…震える手を伸ばした。
目の前の少女が小刻みに震えて、何かを訴えるような瞳で自分を見てくる。
真っ赤な頬を伝う涙の雫。
それをそっと指先で拭えば、レナはぴくっと身体を小さく震わせた。
こくりと、唾を飲み込む。
頬を伝った涙が、ぽたりと落ちて。
耳に聞こえてくるのは、少女の小さな嗚咽。
「ぼぉ…まん…さん…。」
ぎゅっと拳を握りしめて、ボーマンは瞳を閉じた。
深呼吸を繰り返す。
彼女をここまで追い詰めたのは自分だ。
何度も交わしたおふざけみたいなキス。
何度も口に含んだ胸の果実。
何度も触った蜜の溢れる場所。
その先にいかなかったのは、恐かったから。
そろそろ…覚悟を決める時だと感じてはいた。
でも先に行けなかった自分の弱さに、情けなくなってくる。
「……レナ…すまない。」
「ボーマンさんっ…!!」
身を引こうとしたボーマンに、レナが飛びつく。
ぐらりと身体が傾いて、二人そのまま倒れ込んだ。
お互い口の端から小さく声を漏らして、痛みに眉を寄せて。
でもしっかりとレナはボーマンの腰周りに抱きついていたし、ボーマンもレナの背中に回した手から力は抜かなかった。
「私っ!ボーマンさんが欲しい。あなたが、欲しいのっ…!」
叫びだった。
心からの叫びだった。
ずっとずっと願ってたこと。
ずっと言いたかったコト。
レナの言葉に、ボーマンは…ぎゅっと強くレナを抱き締めると――――
その桜色の唇に自分のソレを押し当てた。
がむしゃらに口付けて、呼吸すら奪うほどに激しく口付けて。
苦しげに歪められた眉と、息苦しさに紅く染まるレナの頬が色っぽくて。
乱れた衣服の隙間から手をさしいれれば、極め細やかな肌の感触が指先にした。
「んっ…はぁっ…。」
唾液に光る唇から一滴の液が伝い、それは喉を伝って鎖骨を濡らして。
その後を追うようにボーマンは唇を滑らせていく。
レナはぎゅっとボーマンの項にまわした手を握り締めた。
こんな激しいキスは久しぶりだったし、ボーマンの手の動きが…いつもと違う。
歯の当たる刺激も、唇の愛撫も、舌の動きも、今までとはどこか違う。
本気の愛撫に、身体が粟立った。
既に脳は痺れそうだし、胸は苦しいし。
「ぼーまんさ……。」
「レナっ…。」
呼ばれた自分の名前は、信じられないくらいに色っぽい気がした。
どんな言葉を囁かれるよりもエロい気がして、身体を熱く火照らせる。
「ぁっ…んっ、ひゃっ……。」
胸を鷲掴みにされて、先端を掠るように摘まれる。
それだけで熱くなってくる下半身。一回絶頂にイかされた身体だからか…簡単に追いつめられて行く。いや、彼の本気の愛撫のためなのかもしれない。
「ぁっ…あっん…。」
いつも以上にボーマンの汗ばんだ掌が身体を撫で回す感触や、肌にかかる熱い吐息や体温。荒い息遣い。それだけでどんどん、どんどん身体は燃えるように熱くなってきて。
「ぼぉまんさんっ…。ひゃあっ…あっ!」
ぎゅっと枕を握りしめる。
肌にまとわりつく自分の服が気持ち悪くもあり、気持ち良くもあり。
レナはぼんやりとする視界の端で、ボーマンの白衣とネクタイがベッドの端に落ちたのを見た。
現れたシャツ1枚のボーマンの胸。
ぎゅっと背中に腕を回すと、レナの胸がどきりと跳ねた。
ボーマンさん、直接肌の上にシャツを着てるから……あったかい…。
こんな状況の中でぼんやりとそんなことを思いながら、ぎゅっと抱きつけば汗をかいているのか、じんわりと湿ったボーマンのシャツの感触がした。
それがまたなぜだかレナの身体を熱く火照らせて、性感を刺激して。
「レナ、脚……。」
こくりと頷いて閉ざした脚を開けばボーマンの指が滑り込んできた。
それにびくっと一瞬閉じかけたレナの脚を、ボーマンが抑える。
「ああっ…んっ…はっ、あぁっ……!」
くちゅくちゅと蜜で溢れかえるそこを掻き混ぜられる。
優しくて、それでいてどこか切羽詰ったようなその性急な指の動きに、レナは唇を噛み締めた。
足のツマサキから頭のてっぺんまで走るような痺れと疼き。
疼く下半身に、気が狂いそうで。
「ぼーまんさっ…もっ…きて…。」
レナの伸ばした腕を、ボーマンはぎゅっと握り締めた。
自分の熱以上に熱くて、カタイモノがそこに宛がわれる。
ぶるりと身体が震えた。
「レナ、力…抜いてろよ…。」
返事はしない。
ただただこくんっと小さく頷いて、ボーマンのシャツを握りしめる。
ぬるりと自分の蜜の感触がして、そこを押し広げて入ってくるボーマン自身。
「ひゃあああっ……!」
ぎゅっとボーマンのシャツを引っ張っると、どこか遠くで『ぶちり』っと音がして。
痛みに顔を歪めると、唇を噛み締める。
オナカが苦しくて、熱くて、痛くて。
「ボーマンさんっ!ボーマンさんっ……!!」
ぎゅっとしがみつく。
耳元でボーマンの熱い吐息を感じて、汗が滴り落ちるのがわかって。
「レナ…レナ、平気か?」
こくこくと頷いて、ぎゅっとしがみついて。
鼻を霞めるボーマンの香と汗の匂い。
ずるりっと引き抜かれて、下半身の鈍い痛みが一瞬軽くなって、そしてまた圧迫される。
「くっ…んっ…。」
ぽろぽろと涙がでた。
痛くて。痛くて。でもそれ以上に嬉しくて。
だって自分の中に大好きな人がいるから。
熱い脈動を感じる度に、痛みを感じる度に、彼が自分の中にいるのがわかる。
「ひゃっ…あっ…。んっ、くぅっん……んっ…。」
ただただされるままま揺らされて、ボーマンの抜き挿しを感じて、レナはそろりと瞳を開けた。
目の前にある、ボーマンの肌蹴たシャツの間から見える肌。
伸ばされた手が、レナの胸を掴んで揉み上げる。
「くぅっ…んっ、はぁっ…あっ、あっ…。」
貫かれる度身体を走る痺れが、疼きが、勝手に自分の口から喘ぎ声を零させていた。
信じられないような自分の声に、淫らなこの状況に益々身体は熱く疼いて。
「ひゃあああっ…もっ、やっ……ダメっ…んっ、ああっ……ンっ…。」
止まらない涙が溢れて髪の毛を、シーツを濡らした。
無意識のうちに逃げたいほどの快楽に、勝手に腰を引いてしまうが、ボーマンがしっかりと腰を抑えて逃げられなくて。
頭が真っ白で、何も考えられなくて、苦しくて―――――。
「やあっ……!くっ、んっ…ああっ、あっ……ァっ……!」
「レナっ……。」
気がついたらベットの上だった。
レナは何も身体に身につけないまま寝ていた。
「わた…し…。」
少し喉が痛くて、腰が痛くて。
そして下半身に感じる鈍い痛み。
どうやらいつからかわからないけれど意識を失っていたらしい。
「気がついた?」
「…ボーマンさっ…!!」
掛けられた声と、見つけた笑顔に、ばっと顔が紅くなるのを自分でも感じる。
シャツ1枚を軽く肩に羽織って自分の横に座るボーマンが、色っぽくてかっこよくて。
どきどきと早鐘の様に胸が鳴り響いた。
「初めてなのに無理させたな。すまない。」
「…いえ…あの…その…。」
自分から誘っといて、あんなことを言っておいて、今更なんだか気恥ずかしくてまともにボーマンの顔が見られなくて、レナはばっと下を向いた。
旧に突然込み上げてくる羞恥心。
(私…ボーマンさんと…。)
この鈍く疲れた身体と、痛む下半身が証拠だった。
「すまない…。」
ボーマンの声に、どきりとしてばっと顔を上げる。
幸せな気分と、恥ずかしさで一杯だった胸が旧に切なく疼く。
「あ、謝らないで!謝られたら、私…!!」
「…………。」
ボーマンは再び喉まででかかった言葉を飲み込んだ。
自分は何について謝ったんだろうか。
胸を支配するこの申し訳ないような気持ちの正体は、一体何に対してなのだろうか?
レナを抱いたコト?
レナをここまで追いつめたコト?
レナを抱いてしまったコト?
「私、ボーマンさんが好きだから…後悔なんてしてません。」
びくりと肩を震わせて、ボーマンは隣の少女を見た。
幸せそうに笑う少女が、愛しくて。
この申し訳ないような気持ちは、きっと…いつまでも一歩が踏み出せなかった自分の不甲斐なさになのだろう。
「俺も…後悔はしてないよ。」
ぐいっと小さな肩を抱き寄せる。
柔らかな蒼い髪にそっと唇を寄せると、ボーマンは小さく笑った。
あとがき
レナがかわいそうな話に…!!
おかしいわ…!
だってこれレナを抱くコトへの戸惑いを吹っ切るボーマン
そして二人はラブラブに…の筈だったのに!!
なんかボーマンさんが超ダメダメな男に…!
ってかある意味恐い小説になってしまった…
なんかお昼の連ドラ
ドロドロの不倫ドラマみたいに…(苦笑)
でもボーマンの最後のセリフは本心ですよ?一応…たぶん。
2003/04/20 まこりん
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