■■■ 世界の終わり


あなたの唇が私の唇を掠めて。
優しく頬をすべり、瞼に、鼻の頭に、耳たぶに、触れた。

前はソレが凄く嬉しくて、その時が凄く幸せで。
大好きでダイスキでたまらなかった。

「レナ。」

優しく私の名前を呼ぶ、低い声。

大好き。

今も変わらずソレは一緒。

なのになぜ、こんなに胸が苦しいのだろう。

最初…彼に向ける感情は、恋心とは呼べないもので、ただの憧れで。
彼の知識、人柄、すべてが憧れで、惹かれただけだったのに。
気がつけば憧れは恋心になっていて。

私は彼に、恋をした。

恋をして、手を伸ばして、必死に背伸びして、追いかけて、掴んで、求めて。

初めてキスをした日を覚えてる。
本をずっと読んでて、名前を読んでいるのにちっとも私の方を向いてくれない彼、そして彼がずっと見続ける本。それに嫉妬して。
名前を呼んで、彼が生返事をしたところで彼のネクタイを引っ張った。

驚いて顔を上げたところを、不意打ちでキスをした。

初めてしたキスは、ただ唇と唇が触れただけだったけれども、体中が熱くなって…自分からしたことだったのに、最初に目を逸らしたのは私のほうだった。

次にしたのは彼からだった。
キスをしてとせがむ私に苦笑して、彼はそっと優しくしてくれた。
あの時の、胸の鼓動を今も覚えている。
まるで雷みたいに大きく鳴り響いて、頭がくらくらした。

幸せだった。

キスをして、されて、すごくすごく幸せだった。



なのに、なぜ。

今、キスをするのが辛いのだろう。

するたびに涙が出そうになる。
胸が苦しくて、呼吸が出来なくて、でもあなたへの想いで押しつぶされそうで。
好きで、好きで、好きで…前よりももっと、あなたが好きで。



理由はわかってる。

わかってる。

私の恋は、恋愛じゃないから。

二人でするのが恋愛だから。

私は一人。あなたを慕って、恋をしているだけ。

終わりだってこと、わかってるから。

キスをするのが辛いと感じたってことは、もう終わりだってことじゃないだろうか?

幸せだとばかり思っていた。

でも思えなくなった。

そうなったとき、私は私の中で、もう終わることを感じているからじゃないだろうか?

「ボーマンさん…私…。」

言いかけた言葉が、喉に詰まる。
目頭が熱くて、熱くて、熱くて…。
後から私を抱きしめる腕にチカラが込められた。

きっと彼も、気がついてる。



終わりがきてるってこと。




あとがき

らぶらぶボーレナがお好きな方、すみません。
切ない気分だったので切ないものを書いてみました。
最初の頃のボーレナ小説は結構ばかっぷるというか
甘いんですけれども、最近はなんか終わりの形なのが多いような…(汗)
久しぶりに書きたかったので。
久しぶりのスタオなのにすみません。

2005/04/29 まこりん



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