■■■ カワイクナイオンナ - act.2 - 目の前で素直に泣いてるあの子が、ほんの少しだけ羨ましかった。 でもだからこそ…自分は泣いてはイケナイと、心のどこかで意地を張ってる自分がいる。 1日と半分。 疲れて重たい身体に鞭打って、辿りついたのは『村』とはお世辞にも言えやしない集落。 ひっそりと…こっそりと。 そこに住む人達の顔は暗く沈んでいて、この土地の支配者からの目を逃れるようにちんまりとしていた。 普通の木よりも遥かに高い木々の間に、魔物からの襲撃を避けるかのように静まり返った集落。 その入り口で、外を眺める蒼髪の少女。 薬剤師はクロードが見つかった時のために、薬を調合しているらしくこの場に姿は見えなかった。 剣士はその剣を携えて、集落の回りを巡回しに行ってしまった。 黄金色の髪を持つ美女と、考古学者は自分の隣の柵に腰掛けている。 セリーヌは柵に持たれながら、地面をじっと睨み付けていた。 時だけが過ぎていって、クロード達の安否はわからない。 生きているのかさえもわからなくて、皆が皆、口に出せない一言を呑みこんでは重い溜息に変えて、吐き出していた。 セリーヌもまた、アレから一度もクロードの名前は口にしていなかった。 口にしたら、ガマンしていたものが一気に込み上げてきそうで恐かったから。 「セリーヌは泣かないの?」 「どうしてですの?」 美女に声をかけられる。 それに重たい顔を上げた。 「だって…あなた…。」 「ヒドイ顔してます?」 「していないけれど…していないからこそ…不安だわ。」 「……そうですの…。」 ふふっと…乾いた笑いを漏らして。 再び目は蒼髪の少女を捕らえた。 キラリと輝く月の髪飾りが、ゆらゆらと揺れる。 少女が嗚咽を堪える度に、その月の髪飾りは太陽の光を反射する角度をかえて。 だって…泣くわけにはいかなかった。 あの少女が泣いているからこそ、自分は泣けない。 カワイクナイオンナ? つまらない、ただの意地。 わかってるけど、どうしようもなくて。 「っ………!」 目の端に映る月の髪飾りが、ひときわ大きく揺れた。 風が吹く。 揺れる蒼い髪。 はためくハーフマント。 響く声―――――――。 「クロードっ…!」 その声に弾かれたように顔を上げる。 キラリと輝く金髪が目にはいって、セリーヌは息を呑んだ。 かたかたと腕が震える。 「クロードっ…!私っ…!!」 少女の身体が、クロードの腕の中に収まる。 心臓が、鷲掴みにされたかと思った―――――。 つづく あとがき |