■■■ 素足の君


「ねえ、クロード・・・。」

「全てが終わったら・・・、
もう一度この海を見に来ませんこと?」

「そう・・・今度は二人だけでね。」

はにかんだ君の笑顔が眩しくて、星空に輝く月さえも、君にはかなわないと感じたあの夜。
約束は2度と叶えることは出来ないけれども、エクスペル―――そう、君の住む星には、あのエナジーネーデで作られた人工的な海よりも、遥かに綺麗で澄んだ海があるから。

二人で見に行こう?

トレジャーハントに出かけるそのちょっと前に、海に―――――。
あの夜、あの場所で始まったまま、1歩も先に進んでいない時を進めるために。
二人…始まりの場所へ。















「またこの海がみられるなんて…。」
嬉しそうに細められた目が、目の前に広がる海を見詰めていた。
頬を撫でる潮風。
キラキラと太陽の光を反射させる海。

セリーヌは1歩、海に近付くと大きく息を吸いこんだ。
クロードもその後に続く。
「ねぇ?クロード?ちょっと…入ってきてよろしいかしら?」
「いいよ。」
子供みたいにわくわくした瞳で、でもその無邪気な心を隠すように
セリーヌは声を抑えて言う。
でもその瞳からクロードには彼女の気持ちが手にとるようにわかって。
思わず口許を緩めてしまった。

そのクロードにちょっと不満そうにセリーヌが唇を尖らせて。
そんなセリーヌがやっぱり可愛くて。
クロードは微笑するとそのままそこに座り込む。
するとセリーヌもその横に腰を降ろした。
その仕草にクロードが不思議そうに首を傾げる。

「いくんじゃないの?」
「ブーツを脱いでいきますわ。」
ブーツに手をかけて、セリーヌが笑う。
只でさえキワドイ服なのに、セリーヌがブーツを脱ごうと脚を上げるものだから、クロードは目のやり場に困って海に目をやった。

「セリーヌさんっ!そんなに脚を上げると見えちゃいますよ?」
耳まで真っ赤に染まって、クロードが注意する。
それにセリーヌは慌てて脚を降ろした。
「えっち!じゃ、行ってきますわ。」
ぽいっとブーツを脱ぎ捨てて、セリーヌが海に向かって走り出す。

キラキラと輝く海の照り返しが、セリーヌをその光で包んだ。
「あ〜…子供みたいだな。」
無邪気に笑って、波と戯れる。
そんなセリーヌは初めてみた。
いつもオトナのオンナを演じてて、いつも自分を子供扱いして。
今ならどうみたってセリーヌの方が子供だ。

長く細い脚をおしげもなく曝けだし、ぱしゃぱしゃと水を跳ねらせて踊る。
そのセリーヌは本当に嬉しそうで、楽しそうで…クロードは今この時の幸福に、瞳を細めた。
一度は失った故郷に戻ってこられたことは、やはりセリーヌにとってはなによりも嬉しいものらしい。
彼女の幸せそうな顔が見られたことが、今回エナジ−ネーデを救えなかった自分を責める心に、唯一救いをもたらしてくれる。

出会ってから、こんなに嬉しそうなセリーヌは初めて見たかもしれない。
初めて会った時から、なんて綺麗な人なのだろう―――とは思っていたが、今この瞬間のセリーヌは本当に綺麗で。

この自然の美しさの中にいても、全然引けをとらないどころか瞳が奪われる。
眩しすぎて…クロードは瞳を細めながら、じっと…踊るセリーヌを見ていた。
と、その時、ふいにセリーヌの動きガ止まる。
風に靡く淡い紫銀糸の髪を耳にかけると、満面の笑みで振りかえった。
「クロードっ!あなたも来ませんこと?」
大きく手を振って、セリーヌが呼ぶ。
潮風に乗って届いた声は、とても愛しくて。
無邪気に笑う笑顔も、呼ぶ声も、全ては自分に…自分だけに向けられたもの。

ばさりとジャケットを脱ぎ捨てる。
思うよりも先に、足は駆け出していた。
「セリーヌっ…!」
砂を蹴りながら、靴を片方ずつ脱ぎ捨てて、靴下も脱ぎ捨てて。
波打ち際で自分を待っていてくれる彼女のもとに走り出した。

ぱしゃんっと音を立てて、海に入るとセリーヌが手をさしだした。
その手をクロードは受け取ると、力強く握り締める。
「冷たいね。」
「そうかしら?心地良いですわ。」
ぱしゃんっとセリーヌが脚で水を蹴ると、キラキラと太陽の光に水が輝いた。
「そうやって外で脚出すの、今日が最初で最後ね。」
クロードが苦笑しながら呟く。
ソレにセリーヌはくすりと笑って、クロードの頬をつんと突付いた。
「どうしてですの?」
「わかってるクセに。」
「ふふっ…。」

潮風がセリーヌの髪を攫う。
乱れた髪をクロードは指でそっとセリーヌの耳にかけると、そのまま掌をセリーヌの耳元に当てた。
「僕が…あの夜言ったコト、覚えていますか?」
「……?」
するりと…クロードの手がセリーヌの髪を一房掴む。
「セリーヌさんと一緒に目にした全てを、思い出として残しておきたかったんです。」
「あぁ…それですの。」
掴んだ髪に…そっと口付ける。
そのクロードの仕草は、セリーヌの目の高さの真ん前で行われて。
その仕草に、セリーヌの身体中が熱く火照る。
「今日の…この海も…一生忘れないよ。」
「………わたくしもですわ。」

笑う唇に――――――重なる吐息。

「これからセリーヌさんと過ごす日々も、きっと忘れられないものになると思う。」
唇が離れた後、クロードが照れたように笑う。
セリーヌもつられて微笑んだ。
「今日の思い出は?」

「セリーヌさんの唇の味…かな?」

ぺろりと唇を舐めて、クロードは嬉しそうに笑った。







あとがき

かくやさんからの裏発見リクエストv
クロセリ「裸足の君がまぶしい」
うむ。微妙…だな!
いや〜裸足=海って感じで
海=ラクア告白イベント
って感じで連想ゲームのごとく…
で。こんなショートに。
しかもよくわからない…(苦笑)

ただのバカップル。

いつか違うものを改めて送りたい今日この頃…
ごごご、ごめんなさい!
かくやさんに捧げます。

2002/11/05 まこりん



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