■■■ 鈍感
「たまには外で待ち合わせしませんか?」
「……わざわざ?」
にこっといつもみたいに笑って、金髪の髪が揺れる。
セリーヌは聞きかえした後、軽く溜息をついた。
こんな時のクロードは、絶対に言った通りにする。それがわかっていたからだ。
「だって昔も今も、同じ宿から一緒に出掛けていたでしょう?外で待ち合わせなんてしたの、ラクアの夜くらいじゃないですか?だから…たまには外で待ちあわせでもしてみたいな…って、思ったんです。」
言われてみれば確かにそうだ。
皆と旅をしていた頃はクロードがセリーヌの部屋に迎えに来てくれて。
一緒にトレジャーハントをするようになってからは、同じ部屋なわけで…出かける時は一緒に部屋を出ていた。
あたり前…と言えばあたり前のことで。
別にそれを不満に思うことも、不思議に思うこともなかった。
だから今更クロードがそんなコトを言い出しても、わざわざ外で待ち合わせるなんて…。
めんどくさいと言うか…なんと言うか…。
セリーヌは苦笑すると、部屋のベットに腰掛ける。
そんなセリーヌにおかまいもなしに、クロードは脱いでベットに投げていたジャケットを拾い再び羽織る。
「でも…もうすぐ夕食の時間ですわよ?」
「いいから…じゃあ、1時間後に待ち合わせましょう!」
「えっ…ちょっ…!!」
セリーヌが伸ばした腕をひらりとかわして、クロードは扉へと駆け寄る。
「遅刻したら夕食おごりですよ!」
「えっ…!?」
軽く笑ってクロードが扉の向こうに消える。
一瞬動けなかったセリーヌだが、慌てて扉に駆け寄ると勢いよく開き、もう宿の出口へと走ってしまってるクロードの背中に向かって叫んだ。
「ど、どこでですのっ!!?」
ぱたぱたぱた…
「あ〜……。いっちゃいましたわ…。」
今から追い掛けてもきっとクロードの足に追いつけるはずはない。
セリーヌは軽く溜息をつくと、再びベットに座り込んだ。
「…どうせ…場所を指定していなかったことに気がついて戻ってきますわ…。」
今日もトレジャーハントで疲れた手足をう〜〜ん…と伸ばして、軽く欠伸を漏らして。
部屋の壁に掛けてある時計をみれば、もうすでにあたりは暗くなりはじめる時間だった。
「夕食にでも…出かけるつもりだったのかしら…?」
ころん…とベットに横になる。
ぱふん…っと布団が沈んで、軽く跳ねた。
気持ちの良い感触。
ひんやりと冷たいベットカバー。
お日様の匂い。
ふかふかの感触。
ごろんと仰向けになると、腕を天井に向かって伸ばした。
手袋を外して放り投げ、そしてまたキャッチして。
それを何度か繰り返していると、力加減を間違えて手袋は遠くに飛んでいってしまった。
「あっ…!!」
とさり…と手袋の落ちた場所は、もう一方のベット。
一応…今自分がこっちを汚してしまっているので、向こうのベットはクロードのもの…となる。
そのベットに軽く溜息をついて、セリーヌはカラダを億劫そうに持ち上げた。
近付くと手袋を拾う。
もう一方の手袋も外して、畳むとサイドテーブルに置いた。
「……余計なコトばかり考えつきますのね。」
再びぱふんっと…自分のベットに座り込む。
「…部屋をダブルでとるとか…そういう気はまわりませんのに。」
ふっと…苦笑して、ころんとベットに横になって。
手を伸ばせば触れられる。
声を掛ければ返事がすぐに返ってくる。
そんな近い距離で。近い場所なのに。
あなたの寝息の聞こえる程静かな夜ほど、1人で眠るのは淋しいのだと。
言えない自分の方が悪いのだろうか?
疼く熱を持て余しているのは、自分だけ?
「鈍感…。」
ふふっと…微笑して、少し寒くなってぶるりと身体を震わせる。
もそもそと布団に潜り込むと、なんとなくうとうとしてきて目を閉じた。
あとがき
短いですね…
このその後がクリスマスssになりそうな予感…(苦笑)
書きたかったのはラスト2本のセリーヌさんのセリフのみ
2002/12/04 まこりん
↓ちなみにその後クロード君がどうなったか…というと…???
ばたばたばた………!!!!
ばたん!
「セリーヌさんっ!!ご、ごめんっ!!場所決めるの忘れ……あれ?」
部屋に戻ると、もこりと盛り上がった布団。
耳を澄ませば、規則正しい寝息。
クロードは足音を忍ばせて、ゆっくりとベットに近付いた。
「セリーヌ…さん?」
覗き込めば気持ち良さそうな寝顔。
「ヒドイ〜〜〜寝てる〜〜〜…。」
はあっ…と大きく溜息をついて情けない声をだすと、クロードはへなへなとその場に座り込んだ。
「いつもこうだよ…。」
よっと立ち上がって、向かい側のベットに座って。
寝息をたてるセリーヌの顔をじっと見詰めた。
「……無邪気だよなぁ〜…おまけに無防備。」
くしゃくしゃと髪をかきあげる。
視界の端が金髪によってきらきらと輝いた。
困ったように笑って、クロードはジャケットを脱ぐと自分もベットにころんと寝転がる。
「結局僕だけなんだろうなぁ〜…。」
天井を仰ぎ見ると、クロードは再び溜息をついた。
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