■■■ 手を伸ばして
どこまでも続く星空を眺める。
綺麗な綺麗な丸い月に、そっと想いを馳せて。
月光に向けて両腕を伸ばせば、胸が苦しくなった。
あなたもこの星空を眺めているの?
『僕達の星と、ココは、この星空で繋がっているんですよ。』
『星空で?』
『そう、星空の向こうに僕達の星があるんです。』
そういった彼はにっこり笑っていて、それが悲しかった。
だってこうやっていくら手を伸ばしても届かないところに彼らは住んでいたというのだから。
そしてそこに帰ってしまったのだから。
届かない。
いくら手を伸ばしても。
いくら腕を伸ばしても。
爪先立ちしたって全然届かない。
『でも繋がっているんです。』
『………。』
『離れているけれど、繋がっているんです。』
『……繋がって?』
『だから…こうして星空を見ていたら、あなたのいる場所に繋がっている。歌を歌えば、君に届くかもしれない。ううん。届くと思ってる。』
『………クロード?』
月のように綺麗な綺麗な、金色の髪。
太陽のように輝く黄金色。
その髪に指を絡めて、与えられる口付けに瞳を閉じて。
あのときの唇のぬくもりが、今はない。
ふっと胸が締め付けられて、伸ばした手を引き寄せた。
そのまま自分の胸に抱き寄せる。
「繋がっているんでしたら…今のわたくしの気持ち、あなたに伝わっていますの?』」
会いたい。
会いたい。
会いたい。
会って、キスして、抱きしめて。
キスが欲しい。
その暖かなぬくもりが欲しい。
優しくわたくしの体をなぞる指先と唇のライン。
綺麗な綺麗なあなたの金色の髪が、私の背中を撫でるあのくすぐったさ。
「え…?」
ふっと…窓の向こう。
いや、星空の向こうから。
歌が聞こえた。
誰かの歌が。
心地よいリズム。
心地よい声。
少し高い、それでいて低い、声。
「クロード…?」
『だから僕は歌うよ。』
ゆったりと笑ったクロードの笑顔。
一番わたくしの好きな顔。
安心する笑顔。
『君が寂しいとき、不安なとき、君に繋がるこの空に向かって。』
「だから…キザだって…いつも言ってますの。」
少し恥ずかしくなって、ほほが熱くなる。
それでもそれは…やっぱり嬉しくて。
嬉しくて。嬉しくて―――――。
「ばかですわ。やっぱり。」
あふれた涙を指先で拭って、そのまま涙に光る指先を月に向ける。
自分の胸に引き寄せた腕を、もう一度。
ゆっくりと…伸ばして。
「なんて単純なのかしら。わたくしも。」
微笑った。
綺麗に綺麗に輝く、彼の髪の色と同じ月に向かって。
「きこえますわ。クロード………。」
きらりと光る指先に笑う。
伸ばした手をゆっくりと胸元に引き寄せて。
こんどはまるで大切な何かを零さないように、そっと、そっと、そのまま胸の中にしまいこんだ。
あとがき
2周年アンケート答えてくださった方ありがとうございます
いただいたテーマから『手を伸ばして』です
なんだかもー少女マンガですみません…
なんだかなぁもー
2周年企画小説はどれもこれも不発で困ってしまいそうです…
やっぱりクロセリはスタオの中で一番大好きですし
私の好きカプの根底なので票を入れていただけるのは大変嬉しいです。
ありがとうございましたv
2004/09/06 まこりん
|