■■■ 唇感温度


好きだとか、嫌いだとか・・・・愛してるとか。

わたくしにはよくわからなくて。

いつもいつも、戸惑っていた。



わたくしを見詰める真剣な瞳に。

戸惑いがちに言われた言葉に。



言われなれていないとかじゃなくて、ただ・・・・・。

どんな反応をして良いのかわからなくて。



彼は大事な仲間だったし、コレから先もずっと一緒にいる人だったから。

どんな反応をして、どんな返事をすれば良いのかわからなかった。











「セリーヌさんが好きだよ。」


不意打ちなセリフに、わたくしの指がピクリと反応して止まる。
手にとろうとしていた商品を元の位置にもどすと、ゆっくりと顔をあげた。
微笑みながら腕に抱えた荷物を持ちなおして、
金髪の青年がもう一度口を開こうとしたから・・・・
とっさに合わせていた目を逸らした。


「クロード・・・・。あなた、急にこんなところで言わないでくださいまし。」
自分でもわかる。急に顔が火照って、呼吸が苦しい。
きっと自分はいまとても顔が真っ赤になっているのだろう。
「困る?」
「あ、あたり前でしょうっ!?」
声がうわずってしまってそれにしまったと思う。
おそるおそる再びクロードの顔を見ると、嬉しそうに微笑むクロードの顔。
その笑顔に急激に体温が上昇していく。


「脈有り?」
「冗談はよしてくださいな!」
「冗談じゃないよ。」
「・・・・・・だったら、こんなところで言わないでくださいまし!」
バタン!とドアを押し開いてわたくしは店を飛び出した。





「セリーヌさん!」
「きゃあっ!?」


急に手首を掴まれてバランスを崩す。
そのまま重力に引かれて、わたくしはそのまま地面に倒れ――――――。
ると思ったら、ぐいっと引っ張られてそれを免れる。
どきどきと高鳴る心臓。
ほっと一息付いて、顔を上げるとクロードの顔が目の前にあった。


どきんっ。


ひときわ大きく心臓が跳ねて、急速に高鳴っていく鼓動。
背中に感じる、クロードの暖かい腕。
掌を押し当ててしまった、堅くて広い・・・・男の人の胸。
急にそれらを意識してしまって、顔中が熱く火照っていく。
吐息さえも触れ合ってしまいそうなその顔の近さに、慌てて顔を逸らした。


「・・・・・あ、ありがと。」
「いえいえ・・・・って、言うか、僕が急に腕掴んだからだし。」
「・・・・そ、そうですわよ!急にっ・・・・!!」


顔を上げたら、またクロードの顔がすぐ近くにあって。
慌ててまた俯くと、わたくしはクロードのタンクトップを握り締める手に力を込めた。
どきどきと、自分の心臓の音が耳に響く。
呼吸が苦しくて、身体中が熱くて・・・・握り締めた汗ばむ手。


「ねぇ?さっきの話の続きだけれど・・・・。」
クロードの言葉に思わずこくりと唾を飲み込んだ。
「人前がだめなら、二人っきりの時に・・・・言ってもいいの?」
「ふ、ふざけないで!」
クロードの腕の中から逃げようと身を捩るが、
手首と腰を掴むクロードの手からは逃れられなかった。


ぐっと・・・・心なしか力を込められた気がする。
見れば、楽しそうに、悪戯っ子のような瞳で笑う青年の瞳。
頭がくらくらする・・・・・。
魅了されて、誘惑されて・・・・・甘いこの腕に崩れこみそうになる。


この体勢は危険だ。
とても危険だ・・・・・!


チカチカと頭の中を駆け巡るサイレン。
くるくると回る視界。


もう一体どうすれば良いのかわからない。
セリーヌが半泣きになってぎゅっと目を瞑ったその時―――――――。


ふっと、風が舞った。


「な・・・・何しますの?」
震える唇。
僅かに残った体温。
少しかさついた感触。


「セリーヌさんが好きだよ?」


くるくると回る視界。
チカチカと響くサイレン。
唇に残る、わずかな温もり―――――――。





耳に残った・・・・・甘く切ない声――――――――。






あとがき

温度シリーズ第1弾v
二人とも偽物だぁ〜〜〜!←だめじゃん

サブタイトルは『唇で感じる温度』ということでv


2002/04/04 まこりん



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