■■■ うたたね
エナジーネーデにとばされて、エルリアで父に聞いたエクスペルの消滅を考えると
それを皆に伝えるべきなのか、とか・・・・アレはやはり事実なのか・・・・とか。
毎日考えては頭が重くて。立ち寄った街をなんとなくふらついて、宿屋に戻る。
宿屋に戻って、自分に宛がわれた部屋の扉を開けて・・・・僕の身体が固まった。
「セリーヌさん・・・・。」
僕のベッドに横たわり、読みかけの本もそのままでうたたねするのは愛しいヒト。
ぱさりとジャケットを脱いで、イスにそれを掛ける。
そのままベッドに近付くと、そっと・・・・君を起こさないようにベッドに腰掛けた。
その振動でぱらりと本のページが捲れて、君の髪がその風に揺らぐ。
君の頬にかかる、銀紫の髪をそっと指で掬って・・・・君の耳に掛ける。
「ん・・・・。」
その刺激に僅かに君が反応して、起こしてしまったかと慌てるけれど君はちっとも起きる様子は無くて。
ほっと安心して、その柔らかな髪に指を通した。
「・・・・・。」
さらさらと髪の感触を指先に感じる。
僕のベッドで眠りにつく君。
さっきまで色々な悩みで重たかった頭が、君の一部にこうして触れているだけで
なぜだか軽くなっていく。
そっと・・・・君を起こさないように、その横に添い寝する。
小さく細いその腰に、ゆっくりと・・・・伸ばしかけた腕を一瞬戸惑って止めた。
ふわりと、鼻を擽る君の香り。
胸が満たされて。
言い様のない、愛しさで。
戸惑って止めていた腕を、細腰にまわして抱きしめた。
君の香りは僕をひどく切なくさせて、君の体温は僕をとても安心させた。
頬に当たる君の髪は、僕をとても心地良い眠りへといざなって。
「んっ・・・・くろー・・・ど。」
ひどく甘い声で囁かれた名前は、僕をこの上ない至福の時で包みこんだ。
純粋に、君はスゴイと思う。
傍にいてくれるだけで、僕に幸せの意味を教えてくれるから。
僕がここに来た意味も、僕が生きている意味も、すべて君が教えてくれた気がする。
小さな肩に、唇を押し当てる。
それはとても神聖な口付けにも思えて、僕はかなりロマンチストだったのかと苦笑した。
まどろむ意識が君の香りで包まれる。
君に会えてよかった。
君を愛してよかった。
君に愛されて・・・・よかった。
あとがき
ちょっと初心にかえってみたくなったのです(汗)
マキハラノリユキの「うたたね」から。
歌詞と内容は全然違うのですが、この歌好きなんです。
「それは紛れも無く 僕の愛する毎日」
ってラストが好きです。
何気ない日常の中で感じる幸せ・愛しさ・喉かな空気
そんなものを書き表したくて。
愛しさとか、幸福な気持ちってのは、ふっとしたことで
急に込み上げてきて、水が溢れるように満たされていく気持ちだと思うのです。
2002/07/07 まこりん
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