■■■ あなたのために


「わたくしのために・・・・死ねます?」
「・・・・・・・。」

何を言ってるんだ?こいつは。
剣の手入れをしていた俺の前にあるテーブルに、身体を半分乗せながら顔を除き込んできたセリーヌに、呆れて答える気にもなれなかった。
黙ってそのまま視線を剣にもどすと、剣の手入れを続ける。
するとそれに軽く頬をふくらませてセリーヌが俺の腕を掴んで揺さぶってきた。
こうなると答えるまで離してくれないことは知っている。
仕方なく、危ないので剣を鞘に戻した。
 
「・・・・・・・・突然、どうしたんだ?」
やっと会話をする気になった俺に、機嫌を良くしたのかセリーヌの顔がぱっと明るくなる。
うっとりと瞳を潤ませると、クセなのか銀色に輝く髪の毛を指に絡めた。
「先程、レナに本をお借りしましたの。その本がとても素敵な恋人同士の話で・・・・。」
「くだらんな。」
俺の言葉に再びセリーヌの顔が不機嫌そのもの。にかわった。
まったくころころとよく変わる表情だ・・・・・。
他の仲間といる時はこんな風に表情をころころと変えないのだが・・・・・・。
自分の前でだけ、こんな風に表情をころころと変えるセリーヌ。

「『くだらんな。』ですってぇ・・・・・?!ディアス、あなたっ・・・・・!」
怒って怒鳴りだしそうなセリーヌの腕を掴む。
細くて、ちょっと力を入れたら折れてしまいそうだった。
「ならお前は俺のために死ねるのか?」
「・・・・・・・・・死ねませんわ。」
堂々と片手を腰にあてて言い放つセリーヌに・・・・・ふっと微笑する。
もう一方の手をセリーヌの細腰にあてがい、力を込めて引き寄せる。
ふわりとセリーヌの香水の香が、辺りに漂った。

「・・・・・・なぜだ?」
ぐっと腰を引き寄せ、無理矢理自分の膝の上に座らせる。
困ったように、それでも抗いもせずにセリーヌはおとなしく俺の膝に座った。
「それは・・・・・・・。」
言いかけたセリーヌの唇を自分のそれで塞ぐと、そのまま柔らかい身体を自分の腕で包み込む。
驚いたのか、言葉を失って固まっているセリーヌ。
耳まで真っ赤になっているセリーヌの耳許に唇を寄せて、微笑する。

「俺もお前と同じ理由で死ねないな。」
「・・・・・・ズルイですわ。」

耳許を軽く甘噛みすると、セリーヌの口から甘い吐息がもれ…。
ぴくぴくと身体を震わせたセリーヌ。
言い様のない感情で心が満たされていく。
自分に感情を・・・・ヒトを愛しいと思う感情を思いださせてくれた愛しい女性。
甘い花のような香水の香りが鼻を擽る。

「ちゃんと、言ってくださいまし・・・・・・。」
「お前から言え。」
「命令口調、止めて・・・・・っ、あんっ。」

するりと服の端から手を忍び込ませる。
逃げようとしたセリーヌの腰にまわした腕に力を入れて、その白い項に口を寄せた。
ぺろりと舐め上げ、軽く歯で刺激を与える。

「わたくしが・・・・死んだら、たとえどんな理由だろうとあなたは自分を責めるのでしょう・・・・・?だから・・・・・。」

顎を掴んで、熱い吐息を吐き始めたセリーヌの口に俺の指を挿し入れる。
暖かく柔らかな舌で、セリーヌが俺の指先を舐めた。
指先に感じる痺れに、酔いしれながら・・・・・。
そっと、セリーヌの耳許に唇を寄せる。そしてゆっくりと・・・・・・。

「だから、俺は死なない。」

そう囁いた。
俺の言葉に、セリーヌが切なげに瞳を伏せる。
指先を甘噛みして、セリーヌが俺の腕に手をかけた。
指先の刺激に、かかる熱い吐息。
無意識のクセに刺激的なその行為。

指を唇からそっと出すと、唾液に濡れたままの指で細い首のラインをなぞった。
そのまま鎖骨の間も通過させ縦隔を辿って行く。
辿りついた胸の谷間も通過させながら指を1本ずつ増やして…。
お臍のあたりに辿りついた時にはすでに五本の指で身体のラインをなぞっていた。
そのまま掌で太腿を撫でる。
滑らかな、身体のライン。

「んっ・・・・・。それは・・・・、こっちのセリフですわ。」
「俺のために生きろ。」
「だから、命令口調はっ・・・・・。」
「お前のために生きるから。」
「・・・・・んもうっ・・・・・。」

顔にかかる柔らかな髪の毛がまた心地良い。
触れる肌も、吐息も、体液も。
すべてが自分を狂わせる。
たった一人の女性を求めたいという、欲したいという、感情に。
こんな感情、自分にはないものだと思っていたのに。

セリーヌの背中にぎゅっと身体を密着させて。
俺はそっと、その愛しい肩に頭を乗せた。
心地良い暖かさ。
時折風が吹いては、銀色の髪が視界の端に映って、俺の頬を掠める。

こいつといると、どうしてこんなに落ちつくのだろうか。
こいつといると、どうしてこんな感情で心がいっぱいになるのだろうか。

「珍しく、お喋りですのね。」
「・・・・・・。」
「それでいて、積極的。」
「・・・・・・。」

ゆっくりと白い背中に唇を押し当てると、じれったそうにセリーヌが身動ぎした。
それに微笑しながら・・・・・。
そっと歯をあてて、紅いアトをつける。

「強引なクセに、優しいんですから・・・・・・。」

セリーヌが笑った。
だから自然と俺の口許も緩む。
見え隠れしている太腿の紋章を指でなぞると、セリーヌが擽ったそうに身体を反応させる。
それが愛しくて、やっぱりわざと核心には触れないで、紋章だけを何度もなぞった。

「イジワルですのね。」
濡れた瞳で、セリーヌが呟く。

「俺のために、死ねるか?」
「あなたのために・・・・・生きますわ。」

優しく耳に届いた声に、ふっと・・・・・・、笑みが零れた。






あとがき

某所に送ったディアセリです
年齢指定になっちゃってて・・・・(笑)
うう〜〜ん。
世の中何があるかわかりませんね(笑)

私の中でディアスって、気障なセリフとか割りと言いそうだなって思うんですよ
無表情だけど、恥かしいセリフも恥かしくなさそうで・・・・

私の中のディアスだけだろうなぁ・・・・(笑)

私は大切な人達のために、生きていたいなって・・・・
思います。

改定…改定しようにも・・・
無理です(キッパリ)
うはー拙いもの書いてましたね…私。
後書きまで恥かしいや(笑)!

2002/09/05(ちょこっと改定)  まこりん



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