■■■ Cigarette




「火。」
「自分でとれよ。」
「ケチくせー。」

もそもそと布団の中からのばした手が、ぱちぱちとサイドテーブルを叩いて…指先にカツンと当たる固い感触。

「クソっ…。」

指先で弾いたソレが遠ざかる。
ソレに舌打して、人肌で温まった布団から頭をだした。
急に冷えた空気を顔に感じて、軽く鳥肌がたって。
僅かに身を捩って腕を伸ばせば、腰が軽く痛んだ。
その痛みにまた眉を寄せる。

「ジャマ。」

伸ばした腕は隣にいた男がジャマして、目的のものがとれなくて。
軽く睨みつけると、奴は自分一人で満足そうにタバコを口に咥えて揺らしていた。

「甘えてるのか?」
「なわけねぇだろ…。」
「ホラ。」

咥えていたタバコをさしだされて、「いらねーよ」と言いかけた言葉を飲み込んだ。
視界の端で揺らぐタバコの煙。
ゆらゆらゆら…その動きに目を奪われて。
そのまま口を近づけると、差し出された煙草を大人しく口に咥えた。

甘くて、それでいてほろ苦いこの煙草の味は、奴愛用の煙草の味だ。
何度も唇を重ねているから、嫌でも舌にこの味が残ってる。
嫌いじゃないけれど、このタバコを吸うとどうしてもコイツの舌を思いだすからシャクに触る。
それと同時に先ほどまで自分の中で感じていた奴の熱を思い出して、腰が痛んで更にむかついて。

「クソっ…明日は覚えてろよ。」
「なんだ。明日もこんなことをする気なのか。」
「………うるせーな。」

毎晩繰り返される情事。
仕掛けたのはどちらからだったかなんてもう覚えていない。
ただ誰かの温もりが欲しかっただけなのだと思う。

奴の指が、サイドテーブルにあったタバコの箱を掴んで。
ゆったりと1本取り出すそのタバコを、そっと取り上げた。

「何……。」
「んっ…。」

そしてそのままもたれかかって、自分からキスを仕掛ける。
自分がほんの僅かな間だけ吸ってた煙草は、視界の端にうつった灰皿に押し当てて。
そのまま奴の唇に食らい付くように唇を重ねて。

舌を絡めれば、その動きに応えるように絡められた。

「はぁっ…なんだ。突然。」
「もう一回、しようぜ?」
「…珍しいこともあるもんだな。」

瞳と口では意地悪そうなことを言いつつも、すでに奴の手は俺の脇腹を撫で上げている。
その触り方は、既に甘く痺れるような…いやらしく快感を煽る触り方で。

「っつーか、待て。今度は俺がする番だろう?」
その手を慌てて掴んで、ひっぺがす。
「…今夜はアイテムレクリエーションの成功率で決めた筈だが?俺は95%、お前は80%。差は歴然だな。大人しくヤられてろ。」
「クソっ…。」

口ではそう言いながら、こいつに触られるのは嫌いじゃない。
だから大人しく抱き締められてやった。

キスを交わしながら指を伸ばせば、奴の黄金色の髪の毛が指先に触れて。
それをぎゅっと掴む。
コイツとキスをした時感じたのは『上手い』ってこと。
やべぇって思って、主導権を握られた。
それからなんだかんだでいつも俺の方がされてる気がする。
俺としてはされるよりする方がどっちかって言えば好きだったんだが、コイツの指先には信じられない程に自分の身体が反応してしまうのがわかった。
気持ち良ければ結局どっちだってイイし。

「……オペラが知ったら泣くな。」

ふっと漏らした俺の言葉に、奴は瞳を細める。
それでも俺の脇腹を撫でる手は止めずに、ただただ鎖骨を甘噛みして。

「俺とあいつはそんな関係じゃないさ。妬いてるのか?」
「言ってろ、馬鹿…くっ…。」

奴の指の動き、舌の動きに、先程追いつめられたばかりの身体は簡単に熱を帯びていく。

「それよりお前の方こそ…『奥さん』が泣くんじゃないのか?」
「お前こういう時にそういうコト、普通言うか?」
「先に仕掛けたのはお前だろう。」
「んっ……泣く…だろうな…。でもこういうのは一人でするより、誰かの温もりがあった方が…ぁっ…何倍もイイ……。」

握られた自身に与えられる刺激に、意識がとびそうになる。
後口に入れられた指が、狭いソコを押し広げて…それによってさっき奴が俺の中に放った熱がとろりと漏れ出てくるのが、その感触でわかる。
それをわざとくちゅくちゅと音をたてながら、奴は指を動かして。

羞恥に唇を噛み締める。

「それは確かに…な。それよりボーマン、声殺すなよ。声をだした方がお互い何倍もイイだろうが。」
「んっ…ぁっ…ばかっ…やろっ…!名前呼ぶなよ。恥ずかしいなっ………それに声なんて出せっか、俺は男なんだからな…っ…。」
「強情だな。だが…それがまた俺を煽るよ。」
「クソっ…言ってろ…!うわっ……!!!」

ズンっと勢いよく腰を落とされて、貫かれる刺激。
下から突然はいってきた熱くて固いそのカタマリに、唇を噛み締めて耐える。
快感に揺れた身体を奴は支えて、そして唇の端を持ち上げた。

「ぁっ…それに…。」
「ん?」

ぎしぎしと安もののベッドが軋む音と、結合部から響く卑猥な音が辺りに響いて。
呟いた俺の顔を奴が覗きこんできた

「一度…この味を知っちまうと…クセになる…。」
「………。」

視界の端にうつったタバコの箱。
それを視線で合図すれば、奴もソレに視線をうつした。

「コイツみたいにな。」

ニヤリと笑って、奴の肩に押し当てた手を握りしめる。
奴もにやりと笑って、俺の頬に唇を寄せた。

汗ばむ肌に貼り付く奴の髪の感触が気持ち悪くて眉を寄せると、奴はそっと俺の耳に唇を寄せて囁いた。

「あまり可愛いコトを言うな。」







あとがき

某所のマイナー人気投票見てて
どれ書こっかな〜?って思いまして…
一番書きたいかもって思ったのがエルボー(笑)
でもなんかボーマンさん某漫画のコックさんみたい(笑)
「クソっ」とかさ…タバコネタとかさ…
どっちがどっちのセリフかわかりにくくてスミマセン
二人の年的に(笑)あまりヘビーにしたくなかったので
ソフトな描写にしてみましたvv

ってかここ来てくださってる方で…
エルボーって…受け入れて貰えるのだろうか?
と言うか節操無いよね…私…(遠い目)
今エルネスト熱が何故かアップ状態なのです〜♪

2003/03/12 まこりん



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