ヤバイなぁ〜って思ったんだよね。
なんとなくその扉の前にきてから気がついたんだけれど。

ぎしぎしって何かが軋む音に、ときたま聞こえてくるオペラの小さな声。
堪えたようなその声は、妙に色気を含んでいて。

小さく小さく

「エルっ…。」

って聞こえて。

まずったなぁ〜〜…とか思った。

大体昼間からコレはないんじゃないの?
人の…しかも良く見知った二人のこの場面に出くわすことほど
気まずいことってないじゃない。

私が女だからこう感じるのかな。

なんとなくこういうのって…はたから見るとばかっぽいのよね…。






■■■ レンアイ





「う〜ん…朝から強烈だったわ…。」

まだ少し頭が混乱してて。
あまり気持ちがイイものじゃないわね…と溜息をつく。

「あら、チサト。朝から何唸ってるの?」

声をかけられて顔を上げれば、思わず
あんた達のせいよ。と言いそうになった。

風に揺れる彼女の金髪からは、甘い香りがして
それが妙に艶かしい。

「…ま…ね。色々とあったのよ。」
「そう?」

いつもならそんなの、朝風呂にはいったのね〜。
で終るのだが、今日はソレだけじゃ終わらない。
するな。
とは言わないけれど。
なんとなく。うん。なんとなく。
しないでよね〜とか思う。

お風呂に入ったせいか、さっきの朝かからの『いちゃつき』のせいかはわからないけれど
彼女の白い肌は桜色に色付いていて。
閉じた瞳は憂い気で、妙な色気を感じる。

「チサトは好きな人いないの?」
「え?」

おおっと。
そうきましたか。

ちょっと言葉につまって、顔を上げたら
彼女の優しい笑みがあった。
ときたまオペラはこういう表情をする。
女神様みたいな、そんな笑顔。
大抵自分が恋人とうまくいってる時にするのだけれど。

どうやら今はかなりご機嫌らしい。

「う〜…ん…。今は…いないわね。」
「パーティーの中にも?」

彼女の表情が驚いたような顔に変わる。
それにちょっとだけど、むかっとした。

「ちょっと止めてよ。いつも一緒にいるメンバーの中で作ったりしたら、嫌じゃない。」
「なんで?いつも一緒にいられるのに?」

オペラの言葉にひらりと手を振って、近くにあったフェンスに寄りかかる。
するとオペラも私の隣に寄りかかって、私をじっと覗き込んできた。

「だって好きになったら相手も自分を好いてくれるとは限らないのよ?それこそ他のメンバーの誰かとくっついてたら最悪。それにたとえ恋人になったとしても、ずっと一緒ってのは疲れるから嫌だし。別れたらまた気まずいし。」

私の言葉にオペラがふんふんと頷く。

「そうね。それもイチリあるわ。」

「でしょ?だから私はいらない。職場とか、今回みたいな場合とか。そういうずっと一緒にいなくちゃいけない人ん中ではつくらないの。」

「それ、チサトのレンアイ経験?」

「まぁ…それもあるけど。大体パーティーがカップルだらけだったらウザイわよ?そのパーティー。何をするにも気を使っちゃうじゃない。そのカップルに。うまくカップルじゃなかったりしたら嫉妬とか未練とかドロドロね。」

「安ッポイお昼の連ドラみたいね。」

「何ソレ?」

「ううん。なんでもないわ。」

からからとオペラが笑って、風に靡いた髪を耳にかける。
なんとなく空を見たら青くて、驚いた。
ぽっかり浮かんだ大きな白い雲。
今日はなんて天気がいいんだろう。

「でも一緒にいるから相手のイイトコもワルイトコも見えてくるんじゃないの?」

「………そうね。」

オペラの言葉に苦笑する。
確かにそうだ。
全部見てなかった相手と付き合った時ほど、後で嫌なところが目についたりする。

「それにこんな天気のイイ日は、好きな人とぶらっと散歩でもしたいわね。」

「チサト、年より臭いわよ?」

「言わないで。仕事で疲れてるのよ。そんなパワーは無いわ。ゆっくり休みたい。傍らには愛しい人。最高じゃない?」

「そうね。最高だわ。」

「最高よ。」

よっと勢いをつけてフェンスから離れて。
チサトは遠くに見える影に笑った。
見なれた人影。
隣で笑う彼女の愛しい、大切な人。

「オペラ。」

「なに?」

低くて優しい声に呼ばれて返事をした彼女が、
彼に返事をした後私に向けてにこっと微笑んだ。
それに私も頬笑みかえして、軽く手を振る。
するとオペラは小さく笑って。

「あなたにも早く隣で笑う人が出来ればいいのに。」

「すぐできるわよ。」

「あなた、面白いもの。」

「朝からあまり派手なことはしないでね。」

私のセリフにオペラは一瞬目を丸くして、そして次の瞬間笑った。
再びからからと笑って、髪をかきあげる。
ほんのり朱に色付く目許が、可愛くて。

普段大人っぽい彼女が、子供みたいで。
少女のような彼女に、思わず笑みが零れた。

「やっぱり聞いてた?」

「まぁね。」

「皆には内緒よ。」

「はいはい。」

いってらっしゃい。と手を振って。
私は再びフェンスに寄りかかる。

空を見ればどこまでも広がる青い空。
ぽっかりと浮かんだ大きな白い雲。
今日もいい天気だ。

さて。

今日は何をしようか。




あとがき

オペラとチサト
ただの会話です。

オペラとの会話についてけるのはチサトかなって。

でもなんか二人ともニセモノ…
特にオペラさんがやけに可愛い…!!
つまらんちんもの書いてスミマセン…

2004/04/27 まこりん



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