■■■ 手の中の小鳥 頭がクラクラした。身体もじんじんと火照って、それは風邪を引いたときの症状によく似ていた。 それでも風邪ではないと思う。ここ数日そんな予兆はなかったし、風邪の時に高熱になる原因のひとつでもある、喉の痛みがなかったから。それに鼻も通りはすこぶる良い。 心なしか吐息は熱い気がするが、それ以外に熱を帯びている理由がさっぱりわからなかった。 「おっかしーなぁ…。」 少しだけくらつく視界に、よろける足元。 たっているのが辛くて、ルークはそのまま自室のベットに腰掛けた。 「やべぇ。そろそろいかねーと、師匠が…。」 ちらりと壁にかかる時計を見れば、そろそろ稽古の時間だ。 お昼の休憩を挟んでの本日の稽古は、もう午後の部が始まる時間になろうとしていた。 昼食を食べていたときは、なんともなかったのに。 午前中に汗をかいたため、服を着替えようと戻ってきたとたんに、コレだ。 「ルーク。」 こんこん。と扉が叩かれて、聞きなれた声が聞こえる。 「せ、師匠っ…。」 「そろそろ時間だが…どうした?お前が遅刻するとは珍しい。」 かちゃりと扉が開いて、ヴァンがルークの部屋へと足を踏み入れる。 ベットに腰掛けたルークが、ぱっと顔を上げて―-―そのルークの顔を見た瞬間、ヴァンの瞳が僅かに見開かれた。 「顔が赤いな。」 「な、なんだか、急に眩暈がしちまって…身体が、おかしくって―――。」 「熱か?」 すたすたとヴァンがルークに近付く。 熱く火照る身体と、あまり良く働かない思考回路。そして何故か、激しくなる胸の動悸。 「だ、大丈夫ですっ!稽古―――。」 「ルーク。」 立ち上がろうとしたルークの肩に、ヴァンが静かに手を置いた。 とたんに力が抜けて、すとんっと。ルークはそのままベットに崩れ落ちた。 「あ…れ?」 「身体が熱いか。」 「は…い…。」 「お前もそういう年頃だ。仕方ない。」 「どーゆー…っ!!せ、師匠!!!」 力なくベットに崩れ落ちるルークの、熱い身体。その中心。一番熱く熱を帯びている下半身に、ヴァンは手を添えた。 その突然の行動に、ルークの肩がびくりと跳ねる。 「そ、そんなとこっ!」 「ココが、熱いのだろう?一番、疼くのだろう?」 「んあっ…!!」 「恥ずかしがることはない。自然の摂理なのだから。」 ふっと、ヴァンが瞳を細めて微笑む。 そして半分泣きそうな瞳を向けるルークの頬に、優しく手のひらを滑らせた。 「私にすべてを…身を委ねるんだ。そうすれば、その熱から解放してやろう。」 「せ…師匠…?」 「いいね?」 静かに。ゆっくりと。言い聞かせるように囁かれる言葉。 ヴァンの言っている言葉の意味が、よくわからなかった。 『そういう年頃』だとか『自然の摂理』だとか。でも、自分には良くわからない、自分の身に起きたこの身体の現象の原因が、ヴァンにはわかっているらしい。そしてこの熱をおさえる方法も。 ならば自分にできることはただ1つだ。 師匠の言うとおりに、すべてを師匠に委ねること。 「は…い…。」 熱い。 熱い身体。 熱くて、そして疼く、この身体の芯。 どうしたらいいのかわからなくて。 縋るように、ベットに腰掛けたヴァンの服を掴んだ。 「いい子だ。ルーク。」 ゆったりと。ヴァンが笑う。 縋るように、自分を切なる瞳で見つめるルークを見て、唇の端を緩めた。 とても優しいその瞳は、ルークの大好きなヴァンの、その瞳だった。 「ひゃあっ…あっ、やっ…!」 ヴァンの膝の上で、ルークは微かに身悶えた。 服は着たままだが、ところどころ肌蹴ていて。肌蹴た服の隙間から、ヴァンの無骨な指が滑り込む。 硬く主張を始めた胸の突起を指で摘んだり、弾いたりと…最初はそんなのくすぐったいだけで、なんともなかっただけだったのに…。だんだんと素直なルークの身体はそれを快楽へと結び付けていく。 丁寧に愛撫された胸の突起はすでに触られることが快楽となり、ヴァンの指先の力加減だけでルークの身体の熱を益々上昇させた。 「せっ、せんせぇっ…!身体がっ、へ、変…もっと、熱く…なって、俺っ…!!」 「ルーク。」 「ンあっ!あっ、やっ…!変な、声もでちゃっ…!」」 口元を必死で押さえるルークの耳元で、ヴァンは静かに囁いた。 熱い吐息が熱い耳にかかって、ルークはびくりと身体を震わせる。 胸の突起だけじゃない。自分の身体の中で一番熱い部分も、すでにヴァンの大きな手の中だ。 そこから聞こえるくちゅくちゅとした水音が、更にルークを辱めていた。 今まで自分でもこんな風に触ったことがない。そんなところをそんな風に触られて。 それだけで恥ずかしくて死にそうだった。 しかも自分の口からはさっきから聞いたこともないような声が、自然と漏れてしまっているのだから、益々恥ずかしさは増すばかりで。 「もっ、ヤダっ、せんっ…!」 いやいやをするように頭を振るルークの耳に、ヴァンはゆっくりと口付けそして囁く。 「もうすぐ終る。いい子だから。ルーク。身を任せなさい。」 そのヴァンの熱っぽい声に、ルークは背中がゾクゾクするのを感じた。 意識はヴァンの指先の動きにばかり集中して。 胸の先端から走る刺激や、自身を擦られる刺激に息が乱れて。 頭の中が真っ白になる。 「ンっ、あっ…はっ…はぁっ、はぁっ…。」 自身を扱くヴァンの硬い腕に、爪を立てた。 ガリッと音がして、爪がヴァンの腕に食い込む。 その感触に、ルークはハッと目を見開いた。 そして目にはいったヴァンの腕の傷に、身体をびくりと震わせる。 「あっ、あっ…!!」 「…ルーク。」 「す、すいませんっ…!!」 「悪い子だ。」 ぎゅっと自身を掴まれて。ルークの肩が再び跳ねる。 驚いたルークの頤を掴むと、ヴァンは無理やりに自分のほうを向かせ…そのままルークの唇に貪るように口付ける。驚いて逃げようとした顔を、そのまま手でおさえて。薄く開かれた唇から舌を滑り込ませると、柔らかなゼリーのような舌を絡めとった。 「んんっ…!!」 歯列を舐め、逃げる舌を追いかけて執拗に追いかけて。 どちらのものとも取れない透明な液体が、ルークの唇の端から滴り落ちる。 それをヴァンは指で掬い、再びルーク自身を掴んだ。 最初はゆっくりと、そしてだんだんと激しさを増して。 扱くその手でルークを高みへと導く。 「んんんっ…!!!!」 びゅくっ!びゅくびゅくっ…。 熱く熱を帯びたルーク自身が、二、三度大きく跳ねて。 乱れたルークの服を、先端から飛び出した液体がねっとりと濡らした。 「ぇ…?な…、に…?」 まるで恐ろしい物でも見たかのように、ルークが青ざめて濡れた自分の服とてらてらと陽の明かりに輝く自身を見つめる。 はぁはぁと息を乱しながら、ゆっくりとその液体に手を伸ばして。 指先で触れるとまるで汚い物でも見るかのように、慌てて自分の服で指先を拭いた。 「わわわわっ…!!!」 「落ち着け。ルーク。」 「でもっ…コレっ、なっ…。」 「何もおかしいことではないと、最初に言っただろう?」 「でもっ、なんか、汚ねぇっ…!」 ルークの言葉にヴァンがふっと微笑む。 そのヴァンの微笑みに、ルークは言いかけた言葉を飲み込んだ。 「汚くなんてない。」 そう言うとヴァンはゆっくりと、ルークの放った液で濡れた指先をぺろりと舐めた。 それにルークの顔が、かーっと赤くなる。 「ヴァ、ヴァン師匠!!」 やめてくれと言わんばかりに、その手に掴みかかるルーク。そのルークの肩を、ヴァンは太い腕で抱き寄せた。 ぽすんっと、ヴァンの厚い胸板に、ルークの身体がすっぽりとおさまる。 「気持ちがよかっただろう?」 「えっ!?えっ…と…ま…まぁ…。」 「そうか。」 「師匠?」 とくん。とくんと。 自分が倒れこんだヴァンの胸から鼓動の音が伝わる。 その心地良い音に、ルークはゆったりと目を閉じた。 「疲れただろう?今日の稽古はもう終わりだ。」 「え?でも!」 「身体を拭いて、休みなさい。」 「ちぇ。」 ほんの僅かにルークが頬を膨らませて。 それにヴァンは笑うと、ルークにタオルを差し出した。 シャワーを浴びてこいということらしい。ルークはタオルを受け取ると、乱れた服もそのままに部屋から出て行った。 誰かに会ったらなんと言い訳するつもりなのか。いや、この行為に罪悪感がないからそのままの格好で出て行ったのだろう。 ルークの放った液体が、僅かに零れていたらいい。少しだけ乱れたシーツに指を滑らせると、ヴァンはふっと笑った。 「オリジナルにはここまで効かなかったがな。」 シーツをゆっくりと撫でる。 「所詮レプリカか。オリジナルほどの意志の強さは無いというわけだ。」 そして懐から1つの小瓶を取り出した。 中に入っている液体は半分くらい減っていて。 その小瓶の蓋を開けると、そのまま…ヴァンはシーツにたらりと零した。 「それでいい。このまま堕ちればいい。私のことしか見えなくなるくらいに。」 真っ白いシーツに、淡い桜色の液体が染みこむ。 ほんのりと甘いその液体が染みこむ様を見つめながら、ヴァンはゆったりと―――口元を緩めた。 あとがき
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