いつも陽気な強い瞳に、時々宿る淋しそうな光に気づいた時
胸が締め付けられた。

ずっと彼に憧れていた。

自分では気がついていなかったけれど、憧れていたのだと思う。
自分の出来ない何かをもっている彼に。

それを知られるのが恐くて、ソレを認めたら自分がダメになりそうで。
自分は彼を冷たく突き放したりもした。

それでも…。

自分にまとわりついてくる彼への想いが…。

『憧れ』から『好き』に変わるのに
そう時間はかからなかった――――。










 +++ 境界線 2










4時限目の授業が終わりクラスメイトの皆がばらばらと散っていくなか、デュオは見慣れたヒイロの後ろ姿を発見して駆け寄る。

「よっ!ヒイロお前もこれから食事?」

ぽんっと軽くヒイロの肩に手を置いて、デュオはいつものようににっこりと笑う。覗き込むようにヒイロの顔をみれば、ヒイロはいつも通りの無表情。
そんなにヒイロにデュオは溜息をつく。
そのデュオの手を払うと、ヒイロはさっと歩き出して。
そして……自分の聴覚を研ぎ澄ませる。
たたっと…軽く走る足音。
聞き慣れた、デュオの足音。
さっさと歩き出した自分を追い掛けて来るその姿が、見ていなくても想像できて。
自然と顔が緩みそうになるのにはっと気がついて頬を引き締める。

「待てよっ!ヒイロ〜!!一緒に食おうぜ!」
「その必要はない。ついてくるな。」
「ひでぇなぁ〜。この前はあんなに甘かったのに。」
「………うるさい。」

以前なら殴りかかっていたと思う。
不快なデュオの言動。
なのに今は…このやりとりが、ヒイロは1番好きだった。
誰かといる時間は好きじゃなかったし、自分の時間がとられるのも好きじゃなかったけれど。
デュオとのこの矢理取りが………この日常が何よりも好きだった。

この学園に潜伏する任務がずっと続けば良いと思ってしまうほどに。

ずっと続くことを夢見て、任務を忘れたくなって。
デュオをこうしていたいと。思ってしまうほどに。

が―――。

その願いは。

「ヒイロ。」

とんっと。
再び肩に手をかけられる。
デュオのさっきまでとは違うその低い声に、ヒイロの眉がピクリと動く。

「明朝―――決行だってサ。」

自分の耳元に口を寄せたデュオの。
そのデュオの一言によって打ち砕かれた。

「あぁ…。」

わかっていた。
自分の任務。

絶対に遂行しなければならない任務。

しかし…それさえも呪いたくなるような…。

自分とデュオが一緒にいることを邪魔する、
すべてのものを呪いたくなる程に…自分は――――――。

ひょいっと…デュオが自分を追い越して歩き出す。
じんわりと肩に残る、デュオの掌の温もり。

目の前で揺れるみつあみ。

ゆらゆらと揺れて―――。

ヒイロがそれを掴もうと手を伸ばした瞬間に、デュオがくるりと振り返る。
にっ…といつものように。でもいつもと違うような笑顔で笑って。
ヒイロの掌に収まろうとしていたみつあみが、ひょいっと逃げる。

「だから…サ。ヒイロ。一緒に飯、食おうぜ?な?」

にぱっと笑うデュオ。
逃げたみつあみ。
宙を握り締めた自分の拳。

ヒイロは小さく頷くと、止まっていた脚を再び前へと踏み出した。



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あとがき

タイトルが浮ばないんで「境界線2」って…
だ…ダメですか!!???(ガタガタ…)
これと「境界線」はオフでだしたやつなんですが、その時のタイトルは
「ヒイロ・ユイとデュオ・マックスウエル」なんですね〜
前後編で。だからタイトルなくて…


10月中には完結したいですv

つうかたまには短編をかいたらどうかと思います〜私。



2003/09 天野まこと



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