| ■■■ Destiny act.1 「…エリクール…2号星…。」 ぽつりとフェイトの口からその星の名前が零れる。 マリアは顔を上げると、じっとフェイトの顔を見た。 「…よかったわね。」 「………。」 返事のないフェイトから視線を逸らすと、マリアは唇を噛む。 他の仲間達はさほど何とも思っていないのか、皆何も言わない。 マリアは軽く溜息をついた。 隣の青年は今だじっと床を見詰めただけで。 「……会いたいんでしょう?」 ぽつりとマリアが呟く。 『誰に』とは言わなかった。 言わなくても彼が会いたい人なんて、エリクール2号星ではたった一人しか居ない。 ダークレッドの髪を持つ、炎を瞳に宿した女性。 「………。」 「会いたくないの?」 彼の瞳の先は気がつくといつもあの女性に向けられていた。 長いマフラーを翻して、ムダのない軽やかな動きで戦闘をこなす隠密の女性。 彼女のトレードマークのマフラーさえをも武器にして、彼女はひらりと舞う。 そんな彼女を見詰めながら、彼は瞳を細めていたのだ。 まるで愛しい人を見るような…それでいてとても切なげな…瞳で。 「そんなわけ…ない…じゃないか…。」 やっと口を開いたフェイトに、マリアがはっと息を飲む。 顔を上げると、唇を噛み締めたフェイトがいた。 「もう会えないと思ってた。アレが最後の別れだと。なのにっ…!!会える…。また、会える…。そんなの…今更…僕にどうしろっていうんだ…。」 ふるふると震える手を見ながら、フェイトは眉を寄せていた。 マリアも唇を噛み締める。 ムカムカと胸に広がるなにか。 彼の瞳の先に彼女がいること。それを知ったあの瞬間と同じ。 そしてこの感情の名前も、とっくにわかっていたけれど。 「会いたければ会えばいいじゃない?!」 「会いたいに決まってるじゃないか!でも………。」 「…さよならを決めたのに、いざ会えるとなったらその気持ちが揺らぎそうで恐い?」 こくりとフェイトの喉が動く。 マリアはふっと唇の端を持ち上げた。 「だったら尚更会うべきね。」 「………。」 「シランドに行くのに会わないって方が無理だとは思うわ。」 「うん…。」 フェイトが拳を握り締めるのが見えた。 ふるふると小刻みに震えるその拳に…そっと自分のソレを重ねる。 冷たいその拳に瞳を閉じる。 嵐のような胸のざわめきが穏かになっていった。 「…私も、一緒にいってあげるから。」 「…なんだよソレ。子供じゃあるまいし。」 ぷっと吹き出すフェイトに、マリアもふっと微笑む。 ふふっといつものように笑ったマリアから、フェイトが手を放す。 それにつきりと胸が痛んだ。 フェイトは何気なく放しただけなのかもしれないけれども。 なんで自分があんなことをいったのかわからないけれど。 『一緒に』なんて、なんでいってしまったんだろう。 改めて彼が彼女を好きなのだと、思い知るだけだというのに。 とくん…と。 小さく胸が鳴った。 なんとなく。 なんとなくだけれど。 隣で唇を噛み締め、床を睨みつけるフェイトの姿が気になった。 いつもと違うその雰囲気は、彼女との別れを覚悟したというのに、再会出来る喜びから来るものでは無い気がして。 「フェイト…?」 「………いや、なんでもない。気にしないで。」 曖昧に笑うフェイトに、訝しげに眉を寄せる。 とくん…と。 小さく胸が鳴った。 なんとなく予感がした。 『再会』は、どこか嫌な予感をさせた。 next→ あとがき |