■■■ pure






目の前で不思議そうな顔をしている青年をちらりと見て、ボーマンはこほんと咳払いをひとつした。
向かい合う形でお互い椅子に座っている。
この性教育というものを受けていないらしい(信じられないが)青年に、一体どこから・・・・
何から話はじめればよいのかと・・・・ボーマンは頭を捻らせた。
 

「・・・・・・お前さ、その・・・・アレん時は、どうしたんだよ?」
「アレ・・・・?」
「・・・・・ホラ、朝起きて・・・・・。」
「・・・・・・目覚めの悪い時ですか?」
「・・・・・・・・・・。」
 

困ったようにがっくりと肩を落とすボーマンの様子に、アシュトンの背中に付いた双竜頭がぎゃふぎゃふと騒ぎ出す。
それがまたやかましくて、ボーマンはかなり・・・・・・疲れてきていた。


「あっ、何?そのコト?あっ、それは、最初病気かと思ったんですけれど
男なら普通だって神父さんが教えてくれました。」
「・・・・・・よりによって、神父に相談したのかよ・・・・・お前は・・・・・。」


どうやらボーマンが口にしにくかったことを、ギョロとウルルンがアシュトンに言ってくれたらしい。
それにほっと胸をなでろし、ボーマンはごそごそと懐から雑誌を取り出した。
他にも普段のちょっとしたコトで、反応しちまった時はどうしていたのか?
とか、聞きたいコトは山ほどあったが、恐くて聞けなかった。
ヒトリエッチとか・・・・・どうしていたんだろうか・・・・・。
聞きたいっ!でも恐いっ!


「この前ほとんどニーネに捨てられちまったんだが、なんとか残っていたコレ、やるよ。」
 

取り出したのは、なんとか捨てられないようにと隠しておいた、ボーマン秘蔵の本だった。


「・・・・・『えっちな本』ですか?」
「・・・・・・・なんで『えっちな本』は知ってて、『セックス』知らねぇんだよ・・・・・お前は。」
「皆で旅をしている時に、仲間が持ってました。」
「・・・・・・。」
 
誰かこいつとそういう話した奴いなかったのか・・・・・?もう何がなんだか・・・・・。
ボーマンは大きく溜息を吐くと、隣の部屋のある壁の方に目を向けた。
今ごろ、これまた信じられないくらいに何も知らなかった年頃の少女に、妻が性教育をしていることだろう・・・・。
しかし・・・・・・なぜ・・・・・こいつらこの年で知らないんだ・・・・・。















一方こちらはボーマンとアシュトンのいた部屋の隣部屋である。
プリシスとニーネが向かい合って座っている。

「え〜っと、プリシスちゃん、生理はあるの?」
「あるよ。」

プリシスの返事にほっと胸をなでおろして、ニーネは微笑した。
それなら話は簡単だ。赤ちゃんをバーニィが運んできてくれると思っていたらしいプリシス。
しかしそれが違うってことと、ならどこからやってくるのかってことを説明すれば、わかってもらえるのだ。
 

「じゃあ、なんであるのか知ってるの?」
「大人になったからって、親父が言ってた。」
「・・・・・・・。」


グラフトさんっ!ついでにちゃんと性教育もしてください・・・・。
とは口に出せずに、ニーネは苦笑した。
さてはて。どう説明すればわかってもらえるのだろうか? 


「女の子が赤ちゃんを産むために必要なコトなのよ。」
「赤ちゃんを産むっ!?ってコトは、バーニィーが私の中に赤ちゃんいれるのっ!?」

うぅ〜〜ん。問題発言。
くすりとニーネは笑うと、1冊の雑誌を取り出した。
ああ、私達にも子供ができたらこういうコト、いつか教えるのかしら?
なんてのほほんとしたものを感じ、そしてドコか恥かしくなって、ニーネは頬を軽く赤らめた。


「コレに大体のコトは書いてあるけれど・・・・・。わからなかったら聞いて頂戴?
知らないままに進めちゃいけないコトだから・・・・。」
「ふぅ〜〜〜ん。」
 

ぱらぱらと雑誌を捲り、簡単に目を通す。
でもやっぱりプリシスにはよくわからなかった。
取り敢えず最後の文章に目を通して頷く。


「好きな人以外とはしちゃいけないんだ?コレ?」
「そうね。」
 

簡単なコトで、当たり前のコトだけれども、でもとても大切なコト。
プリシスの言葉に、ニーネは嬉しそうに微笑んだ。
くるくるっと雑誌を丸めて、プリシスが立ち上がる。
そして二人部屋の扉へと足を向けた。


「じゃあ、ボーマンとニーネさんはしてるんだ??」

プリシスを送り出そうと扉の前まで歩いていったニーネの動きが止まった。
どうしてこう・・・・・素直なんだろうか・・・・・。目の前の少女は・・・・・。
恥かしくて「そうよ」なんて言える筈がない。
好奇心で瞳を輝かせた少女に照れ笑いを向けて、ニーネは扉を押し開いた。







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