■■■ ツマサキダチの恋
「きゃあっ!」
ドサリ。
腕に伝わる衝撃に、耳に届いた幼い声に、はっと・・・・・我に返った。
「イタタ・・・・・。」
眉を顰めるプリシスを組み敷く腕が、どっと汗をかく。
急激に覚めていく情欲。
急激に湧き上がってくる、罪悪感―――――。
「もうちょっと優しくしてよね〜・・・・・。」
(どどどど、どうしよう・・・・・。)
この体勢を変えようにも身体は動かず、視線すらもプリシスから離すことは出来ない。
ボーマンの耳にプリシスの声は届いてなかった。
「ボーマンせんせぇ〜?」
(コレは、やっぱり・・・・マズイよな・・・・・。)
「ボーマン先生!」
(ど、どこまでやったらマズイ?)
「ボーマン先生ってば!!」
(き、キス・・・・はまだセーフか?)
「ちょっと、聞いてるの!?」
(押し倒したけど、脱がしてないし・・・・。)
「ボーマン先生!!」
(でも誘ってきたのはプリシスだぞ・・・・?)
「う〜〜〜〜〜〜〜。」
(つーかガキの誘いに、意識飛ばすなよ・・・・俺!!)
「ボーマン先生っ!」
「イタタタタタタ!!」
プリシスがボーマンの耳を思いきり引っ張る。
その痛みにボーマンは叫んだ。
それと同時に、やっと今のこの状況に意識が戻された。
「な、何すんだオマエは!!」
「聞いてるの?!人がさっきから呼んでるのに!」
怒ったように頬を膨らませて、プリシスが両腕をボーマンの首に絡める。
ぐんっと引っ張られて、ボーマンの顔がプリシスの顔に近付く。
吐息さえも触れ合うような、そんな近い距離で。ボーマンは再び顔を染めた。
「また何かくだらないコト考えてたんでしょ〜?」
「くだらないってなぁ〜・・・・・。オマエ。ホント、何考えてんだよ?」
プリシスの耳許に置いた腕に力を込める。
引っ張られる腕の強さと重力に、必死で抗ってボーマンはその距離を保った。
「アタシ、ボーマン先生が好きだよ?」
「・・・・・・・。」
いつものプリシスの声とは違う真剣な声のトーンに、ボーマンは息を呑んだ。
「どうしたらこの気持ちが伝わるのかって・・・・・考えた。」
プリシスの真剣な瞳から、目が離せない。
「考えて―――――考えても無駄なコトに気がついたよ。」
その真剣な瞳に映るのは、間の抜けた情けない表情の自分。
「だって、ボーマン先生は、私をオンナとして見てないじゃん。」
どきりと、ボーマンの心臓が跳ねる。
プリシスの瞳に映る自分が揺らいだからだ。
潤み始めたプリシスの瞳に、言葉がでない。
「だったら、こうして誘惑するだけだもん。」
「オマエなぁ〜・・・・・。俺とお前は10も年が違うんだぞ?」
呆れたように言葉にするのが精一杯だった。本当はもうボーマンにも気が付いていた。
プリシスの真剣な想いに。
恋愛に年の差なんて関係がないことに。
でも。それでも・・・・・やはり戸惑う。
10年という年の差は、それだけボーマンにとっては大きなものだった。
「10年なんて、丁度イイじゃん。アタシが20の時、ボーマン先生は30でしょ?」
ごくりと、ボーマンが生唾を飲み込む。
「30なら40。50なら60・・・・・お似合いじゃん?」
どきりとする。目が覚めた。そんな気分。
「70と80なら素敵な老夫婦だよね。」
無邪気に笑うプリシスに、意識が吸い込まれて行く。
「老夫婦って・・・・お前・・・・。」
ボーマンが苦笑する。苦笑して・・・・困ったように笑うその唇をそっと・・・・プリシスの頬に滑らせた。
頬を掠めるその感触に、プリシスが擽ったそうに笑う。
「だからノープロブレム!」
世界中の幸せを、集めたみたいなそんな笑顔でプリシスが笑った。
その笑みにつられてボーマンも微笑う。
「誘惑・・・・・・されてやるよ。」
頬に優しく口付けて、目尻に、瞼に、そっと唇を滑らす。
プリシスが擽ったそうに寄せた眉間の皺にも口付けて。
火照り熱を持ち始めた頬をそっと指で撫でた。
柔らかで、滑らかな頬のライン。
幼さの残る・・・・可愛らしいそのラインを、指で、唇で辿って行く。
耳朶をそっと唇で挟んで、開いている手でプリシスの髪を梳いた。
さらさらと流れる髪を弄るたびに、プリシスの鼻にプリシスの髪の香りが香る。
「んっ・・・・・!」
小さく漏れるプリシスの声に、目を細めて・・・・ボーマンはプリシスの唇を指先でなぞった。
滑らかではなく、ベタ付いた感触。
リップのことを思い出して、ボーマンは顔を上げた。
「ボーマン先生・・・・・。」
今この雰囲気に酔っているのか、とろんとした瞳でボーマンを見上げるプリシス。
それに愛しそうにボーマンは口許を緩めると、再びプリシスの唇を自分のソレで塞いだ。
啄ばむように口付け、舌で、唇で、プリシスの唇を染めるリップをとっていく。
「ン・・・・・。」
切なげに瞳を伏せて、プリシスがボーマンの首に回した腕に力を込める。
ボーマンは自分の身体を支えている腕の、掌に当たるプリシスの髪を優しく撫でながら
空いている手でプリシスの服のボタンを外し始めた。
キスに夢中になっているのか、プリシスはボーマンの指の動きに気が付いていない。
自分の身体の下に、すっぽりと埋まっている少女。胸に広がる愛しさ。
「プリシス・・・・目、開けてろよ。」
熱い吐息が口にかかる。
ボーマンの言葉にプリシスが瞳を開くと同時に、ボーマンが再びプリシスの唇に自分のそれを重ねた。
目の前に広がる、視界――――。
視界を埋め尽すのは大好きなボーマンの顔で。
瞳に映る自分の目が、信じられないほどに色っぽい。
絡み付く舌に夢中になって舌を動かすと、それに応えるように動いてくれる。
ボーマンの手が髪を触るのが、振動で伝わる度に脳がくらくらしてくる。
甘い疼き。甘い感覚。
惑わされる・・・・ボーマンの瞳に。
「ボーマンせんせ・・・・。」
プリシスの腕から力が抜ける。
とさりと落ちたプリシスの指に自分の指を絡めて、ボーマンは唇を離した。
光る糸をそのままに、プリシスの首許に顔を埋める。
びくんとプリシスが跳ねて、ぎゅっとボーマンの手を握り締めた。
ひとつひとつの反応が、楽しい。
「ひゃっ・・・・んっ。」
すっかり前を肌蹴させたプリシスの服に、掌を滑り込ませる。
少女独特の柔らかな肌に、指が震える。
発展途上の身体。
幼さを残しつつ、少女から女性への変化途中のその身体に・・・・思わず噛み付きたくなってくる。
(マジで・・・・コレはやべェ・・・・・。)
くらくらと頭の芯が痺れてきているのは、プリシスだけではなかった。
ボーマンもまた、今のこの状況に麻痺しそうになってきていた。
がむしゃらに抱きたい気持ちを抑え、プリシスが恐がらないようにと優しく髪を愛撫する。
「プリシス・・・・・。」
名前を呼ぶと、瞳で返事をするプリシス。
その仕草が今のプリシスの状態を現していた。
「いたっ・・・・・。」
白く柔らかな肌に浮んだ鎖骨の上に、ボーマンが歯を当てる。
甘噛みして、そしてぺろりと舐めて。
プリシスの身体に朱の痕が咲いた。
その紅い痕をゆっくりと指で摩って、プリシスの胸を覆う白いブラジャーに指をかける。
「んっ・・・・。」
ぴくりとプリシスが反応する。指でブラジャーをずらすと現れる、桃色の突起。
白く柔らかな丘の上に色付くそれを、ボーマンが口に含む。
外気にさらされて尖ったそこに感じる暖かさ。プリシスの身体が震えた。
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