■■■ 小悪魔の誘惑 - celine→crawd -
(眠れない・・・・・・・。)
むくりと起き上がると、クロードは肩に感じた肌寒い空気にぶるっと肩を震わせた。
軽く溜息を付くと、がしがしと髪の毛を手で掻き回した。
近くにあったジャケットを羽織ると、ベッドからゆっくりと降りる。
床につけた足がひやりと床の冷たさを伝えた。
連れの剣士を起こさないようにそっと扉を開けて、部屋の外へと出て行った。
宿の廊下の先にあるちょっとしたテラス。
ふっと人の気配を感じて、クロードはゆっくりとそこに近付いた。
「あれは・・・・・。」
月夜に輝く銀色の髪の毛。
風に揺らめいて、鮮やかに月の光を反射していた。
踝まで隠した豊かな純白の寝間着が、
緩やかな風にゆったりとはためいている。幻想的なその姿に、クロードの時が止まった。
(セリーヌさん・・・・・・。)
初めて会った時から、目も心も奪われて、引き付けられている女性。
大人の女性と言わんばかりの表情をしたかと思えば、
まるで少女のようにあどけない表情をしたりする。
毎日新しい一面を見つけては、
自分の中に強く深く印象を残している紋章術師。
そっと、自分とセリーヌを妨げているガラスに手を当てると、ゆっくりと押し開いた。
「クロード。」
テラスに出てきた青年の名を呼ぶと、セリーヌは豊かに微笑んだ。
その微笑に目を奪われながらも、クロードはそろそろとセリーヌに近付いた。
隣に立つと、柵に寄りかかる。
「眠れませんの?」
「えぇ・・・・・。まァ・・・・・。」
手に持ったグラスを傾けて、セリーヌが微笑った。
深い、それでいて透き通るようなワインレッドの液体が、
セリーヌの口の中に吸い込まれていく。
それをクロードは虚ろな瞳で見詰めた。
こくりとセリーヌが喉を鳴らすと、自分も自然と唾を飲み込んだ。
闇の中だというのに、いや、闇の中だからこそ、綺麗に輝くその姿。
なんて綺麗な人なんだろう。
そう思って、クロードはじっとセリーヌの横顔を見詰めていた。
するとくるりとセリーヌがクロードの方に身体を向ける。
その時の上目遣いの挑発的な瞳に、クロードの胸が高鳴った。
「早く寝た方がよろしいのではなくて?明日は武具大会じゃありませんの。」
くすりと含み笑い。
その子供をあやすような言い方に、クロードが口をちょこっと尖らせた。
「・・・・・大丈夫です。結構落ち着いていますから。」
「勝てそうですの?」
「それは、わかりませんけれど・・・・・。セリーヌさんがお守りくれたら、勝てるかも。」
ちろりと、セリーヌを伺い見る。
再びグラスを口につけていたセリーヌが、
不思議そうにクロードの顔を見ていた。
グラスの縁に付いたルージュの跡が、
艶やかに月明りに輝いている。
「お守りって・・・・?」
首を傾げるセリーヌの瞳を見詰めると、その細い手首を掴んだ。
「クロ・・・・・。」
問い掛けようとしたセリーヌの唇が塞がれる。
「んっ・・・・・。」
手首を掴んでいた手は、何時の間にかセリーヌの腰に回されていて、
強く引き寄せられていた。
「ちょ・・・・・。」
口を開きかけたところで、舌が侵入してくる。
激しく絡めとられて、息をすることすら出来無いくらいに激しいキスだった。
甘くもなければ、気持ちがイイわけでもない。
ただ、想いを押しつけるような、
まだ少年のようなあどけなさと、
若さを感じさせる激しいキス。
唇が離れると同時に、クロードの腕からも解放される。
キッとクロードを睨みつけると、悪戯っ子のように笑うクロードがいた。
若さゆえの激しいだけのキスをしておいて、それを魅力とも感じさせる瞳だった。
「優勝したら、付き合ってよ。」
ぺろりと口に付いたルージュを舐めながら、クロードが妖しく微笑んだ。
その微笑に、セリーヌはくらくらと眩暈を感じる。
なんて小悪魔的な瞳。
妙な色気すら感じてくる。
なんだかとても、悔しい・・・・・・・。
セリーヌは唇を指で拭うと、そっと、クロードの首に腕を回した。
出来るだけ魅惑的な濡れた瞳で、クロードの理性を刺激してみせる。
戸惑い、頬を染めた青少年らしいクロードの反応にに、ふっと・・・・口許を緩めた。
「セリーヌさん・・・・?」
「黙りなさい。」
ぐっと引き寄せられて、今度はクロードがセリーヌに唇を塞がれた。
まさかの展開にクロードが瞳を見開いた時だった。
鼻を擽る甘い香り。
セリーヌの瞳が、月明りを宿して妖しく輝いている。
にゅるっと、舌が滑り込んできて、甘く絡めとられた。
口内に広がる、甘いアルコールの味。
(え?え?え?)
混乱する頭で、クロードは必死に理性の糸を繋ぎ止める。
柔らかく、暖かな舌の動き。
絡めとられて、甘く吸い取られると、脳が痺れてきて全身に鳥肌がたってくる。
立っていることすら辛くなる程の、身体の底から痺れる甘い口付け。
激しくて息が出来ないのではなく、気持ち良くて息が出来ない。
相手の舌の動きに応えることすら出来ないくらいに、
クロードはその甘く、優しいキスに痺れ、酔っていた。
「ふっ・・・・・。」
無意識の内に甘い吐息が漏れていた。
ゆっくりとセリーヌの顔が離れていくのを、濡れた瞳で虚ろに見詰める。
何も考えられない。
離れていく唇を、名残惜しいと思うコトすら出来なかった。
「あんな乱暴なキスではなくて、こんな風に甘いキスが出来るようになりましたらね。」
くすりとセリーヌが微笑った。
上目遣いでクロードの瞳を捕らえながら、
トンっとクロードの胸を人差し指で押してくる。
そこで、はっと我に返った。
こっちの反応を楽しんでる。
なんて小悪魔的な瞳。
魅力的で、誘惑的で、挑発的。
誘っているとしか思えない。
あんな刺激的なキスをしておいて、セリーヌ自身はなんともないのか。
クロードは今にも倒れ込みそうなのを、必死に堪えているというのに。
さらに言わさせてもらえば、このキスはかなりクロードのオトコの部分を刺激した。
今にもその細い腰を抱き寄せ、もう一度キスをしたい。
キスをしたいし、その柔らかな肌に触れたいし・・・・・・。
自分ばかりがこんな風に乱されて悔しかった。
その挑発しているような瞳を
声を
身体を・・・・・・・
乱れさせたかった。
そんなコト、出来るほど・・・・・クロードには勇気がなかったけれど。
くるりとクロードに背を向けて、
建物の中へと戻っていくセリーヌの背中をじっと見詰める。
ぱたん・・・・。
と音がして、セリーヌの姿が完全に見えなくなった。
「かなわないなァ〜。」
ぽそりと呟くと、月を仰ぎ見る。
セリーヌがいなくなっただけで、
輝きを失った辺りをくるりと見まわすと、
再び唇を一舐めする。
あまりおいしいとも思えない、
ルージュの味が僅かにした。
疼く、身体。
「う〜ん・・・・・。」
苦笑すると、前髪をくしゃりとかきあげる。
そのままこつんと柵に額を押しつけて
思いっきり息を吐き出すと
・・・・・・・困ったように笑った。
やっぱり今夜は・・・・・・眠れそうにない・・・・・・・・・。
あとがき
タイトルからできた小説(笑)
この武具大会前のやりとりは結構前から考えてありました〜
だからゲーム当時の私の中の二人
今とはちょっと違うんですけれど・・・・・
だから今の私の中の二人が続きの話になりますv
これも某所に送ったもの
2001/12/28 まこりん
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