■■■ 小悪魔の誘惑 - crawd→celine -
そっと・・・・。自分の唇を舐める。
数日前の出来事だというのに、微かにまだあのキスの感触が残っている。
柔らかな舌の動き。
思い出すだけで自然と舌が動いた。
求めるように。
もっと、もっと・・・・あのキスが、ほしい。
すでに真夜中と言ってもいい時間帯だと言うのに、なかなか寝付けなかった。
布団の中で何度も寝返りをうっては、唇にそっと指で触れる。
その度にあの甘い誘惑を思いだし、頭の中はセリーヌでいっぱいになってしまう。
甘い香水の香り。
魅惑的な瞳。
ルージュの味。
すべてが鮮明に、脳裏にやきついていた。
「セリーヌさん・・・・。」
敵わない年上の女性。
自分のしたキスの、なんとコドモっぽかったことか。
彼女のしたキスの、なんと甘く刺激的だったことか。
そこでふっと・・・・・。あることに気が付いた。
彼女は今までに・・・・・誰かと、あんな甘いキスを何度もしていたのだろうか?
彼女にあのキスを・・・・・教えたのは誰なのだろうか?
ふつふつと湧き上がる、嫉妬心。
「なんか・・・・・。ちょっと・・・・。」
自分だって、今まで誰かと付き合ったことが無かったわけじゃなかった。
自分で言うのもなんだがルックスも悪い方では無いし、
ロニキス提督の息子であり、エリート街道まっしぐらだった自分に寄ってくる女は多かった。
ただの肩書きに、何を求めるのか・・・・。
別に手当たり次第に付き合ったたわけではないけれど。
チクチクと痛みだしたオナカ。
眉を寄せるとクロードはそっと・・・・・ベットから足を下ろした。
ひんやりと、床の冷たさが足を伝った。
かたん・・・・・。
かすかな物音。
耳に届いたその音に、セリーヌは振り返った。
見なれた金髪の青年が、こっちに向かって歩いてきている。
「クロード。」
宿屋にある、テラス。
そこの柵にもたれかかって寝る前の一口を口に含んだ時だった。
「眠れませんの?」
「えぇ・・・・・。まァ・・・・・。」
隣に立った青年にそう尋ねたところで、
数日前にかわした会話と一緒だったことを思いだす。
思わず緩んでしまった口許はそのままに、セリーヌはグラスを口に寄せた。
「そういえば・・・・武具大会。準優勝なんて、クロードもやるじゃありませんの。」
くすくすと笑いながらセリーヌがクロードを見詰める。
その瞳から困ったようにクロードは目を逸らした。
いつだってセリーヌの瞳は、自分を困らせるから直視出来やしない。
「セリーヌさんに、お守りもらったからね。」
と、ちょっと強がってみせる。
柵にもたれかかって、満天の星空を見上げた。
「あ〜あ。勝ったら、付き合ってもらえたのに。残念。」
がっかりしたように溜息をつくと、クロードはそのままへなへなと座り込んだ。
それをじっと、セリーヌは見詰める。
「わたくし、そんな約束しましたかしら?」
「・・・・・・してないけど。」
自信が、持てる気がしたんだ。
誰よりも強く、誰よりも綺麗なこの女性を守りきれる。
はぁっと溜息をついてクロードが頭を抱え込む。
そのクロードの肩にそっと、自分の手を添えるとセリーヌもその横に座り込んだ。
手に持っていたグラスを、足元の邪魔にならないところに置く。
「クロード・・・・・。」
名前を呼ばれて顔を上げると、セリーヌの顔がすぐそこにあった。
「セ・・・・・。」
そして再び口を塞がれる。
あの夜の甘い刺激を思い出して、クロードはぎゅっと瞳を閉じた・・・・・。
が。ただ、重ねられただけで離れていく、柔らかな唇。
不思議そうにクロードが瞳を開けた。
「準優勝の、ご褒美ですわ。」
「・・・・・・・誘ってんの?」
「えっ・・・・?」
楽しそうに笑っていたセリーヌの表情が変わる。
それがまた初めてみる表情で、
クロードは自分の肩に置かれたセリーヌの手を掴んだ。
掴まれた手の熱さに、セリーヌの胸が高鳴る。
どきどきする。
自分を見詰めている瞳は、
さっきまでのクロードとは思えないほどに・・・・
真剣で、オトコのヒトのものだった。
「クロード?」
「あのキス、出来るようになったら・・・・・付き合ってくれるんでしょう?」
「クロ・・・・っ。」
言いかけた言葉ごと唇が塞がれる。
抗おうにも腰に腕をまわされ、手首はきつく掴まれ。
顔を遠ざけようにも甘く吸いついてくる。
とっさのことで息苦しくて、セリーヌは眉を寄せた。
身体が覚えている、クロードのキスに、身体が強張った。
啄ばむようなキスの後に、舌を挿し入れられる。
力の篭っていない柔らかな舌が、自分の口内を愛撫していた。
(え・・・・・?)
驚いて瞳を開けると、金髪の隙間から蒼い瞳が自分の瞳を捕らえていた。
まるでこっちの反応を伺っているかのように、楽しそうだ。
クロードの舌の動きに、身体が、脳が痺れて、全身鳥肌がたってくる。
熱く疼く身体。
息苦しかった。
気持ちよすぎて・・・・・息ができない。
意識も手放してしまいそう・・・・。
「気持ちイイ?」
ぼんやりとしか映らない視界に、クロードの勝ち誇ったような瞳が映った。
本当にクロードは小悪魔だと思う。
なんでこんなにわたくしの好きな瞳をするの。
そして更にわたくしに言わせようとするんですのね。
「・・・・・・・えぇ。」
素直に答えるのは悔しかったけれど・・・・・。
そんな風に嬉しそうに
楽しそうに
瞳を輝かせて言われたら
素直に頷きたくなるじゃありませんの。
まだ動機のおさまらない胸に、そっと手を押し当てた。
「ってことは・・・・付き合ってくれるの?」
「・・・・・・・。」
なんでこんなに素直に聞いてくるのかしら。
飾り気もない、まっすぐな言葉。
もうちょっとくらい、甘い愛の言葉を囁いてくれたっていいのに・・・・・。
それは、求めすぎかしら?
「・・・・・よく、こんなキスが出来るように・・・・なりましたわね。」
「だって、ホラ。セリーヌさんを気持ちよくさせたいって、思ったから。
教わったことはちゃんと学ばないと。」
ほんとにどうしてこう・・・・・。
小悪魔なのかしら。
そんなことを言われたら、もっと他にも色々と教えてしまいたくなるじゃありませんの。
そんなに瞳を輝かせて、そんなに嬉しそうに笑わないでほしいですわ。
「そうだ!セリーヌさんさ、今までに誰かと付き合ったこと、あるの?」
「・・・・・失礼ですわね。」
そう言って立ちあがろうとした瞬間、腰にまわされた腕に力が込められた。
顔は笑っているけれど、
どうやらこの答えは答えないと離してもらえないらしい。
ふう・・・・っと、溜息をつく。
「付き合っている方なら、いますわよ。」
「えっ・・・・・!!?」
瞬間に真っ青になるクロードがかわいくって、セリーヌは口許を緩めた。
「だって、でも・・・・・。」
目を白黒させるクロードの首に、そっと自分の腕を絡めた。
そしてそのままクロードを押し倒す。
どさりと、衝撃が二人に伝わった。
「・・・・・・・。」
「・・・・・んっ。」
重なる唇。
唇が離れるとクロードは不思議そうにセリーヌをみた。
そのクロードに、セリーヌはきゅっと、抱きついた。
頬と頬とくっつけて、楽しそうに微笑む。
そして耳許で甘く囁く。
「また、キスでわたくしを誘惑してくださいな。小悪魔さん。」
ふふふ。と笑う吐息が首にかかった。
耳まで真っ赤に染まったクロードの耳に、
ふっと軽く息を吹きかけて、セリーヌは微笑んだ。
「小悪魔はどっちだか・・・・・。」
くらくらと眩暈を感じて、クロードは口許を掌で覆った。
自分は今とてもすごい顔をしているんではないだろうか。
胸全体を占めている感情と共に、ゆっくりと・・・・苦しげに息を吐き出した。
もう本当に敵わない。
勝とうとすら思えないくらいに、こんな彼女が大好きだ。
こんな小悪魔な彼女だからこそ
惹かれて
引きつけられて
心奪われているのだと思う。
小悪魔って言うよりも、魔女・・・・・か?
胸元に感じる柔らかな胸のふくらみを感じながら、
クロードはその細い身体を抱きしめた。
あの自分を痺れさせたキスは、今度は一体いつしてくれるのやら・・・・・。
今ならそのままエッチになだれこめそうな勇気と勢いがあるんだけれど。
してほしい時にしてくれない。
してくれないなら、自分からするだけだけれど。
そう思って再び、セリーヌの後頭部に腕をまわすと、身体を反転させる。
そしてセリーヌが頭をぶつけないように、自分の腕で彼女の頭を守った。
今度はセリーヌがクロードの下に組み敷かれる番だった。
じっと熱い瞳で自分の瞳を覗きこんでくる少年に、臆する様子も無く彼女は微笑っていた。
色鮮やかなルージュが、月夜にキラリと輝く。
その濡れた唇に・・・・・・・。
そのまま吸い寄せられるかのように・・・・・・・・・。
クロードはセリーヌの唇に吸い付いた。
あとがき
と、いうわけで小悪魔の誘惑後編
これが今の私の中のクロセリですか(汗)
結局クロードがセリーヌさんに弱いように
セリーヌさんもクロードに弱いのよ
みたいな・・・・・(汗)
でもなんか無駄に長くなっちゃったなぁ〜って
ちょっと反省
たぶん書いてる本人だけが楽しかったもの
これも某所に送ったものですが
15禁指定になってて、ビックリしました(笑)
2001/12/28 まこりん
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